2010年04月04日

「みんなの意見」は案外正しい/ジェームズ・スロウィッキー

『「みんなの意見」は案外正しい』を読んだよ。この「案外」というのがミソなんだけど。

どの本だったか記憶に無いのだけれども、以前に読んだ本で紹介されていたもの。本屋の店頭で本書を発見した時に、すぐにピンときたぐらいだから、アッシの記憶の片隅にかなりのインパクトを残したのだと思う。っていうか、タイトルが印象的なだけなのかも。

で、論旨はと言うと、要は集合知。一人の専門家の判断と、大勢の素人集団の判断のどちらが正しいのかという問題。アメリカでの多くの事例を紹介しながら、考察しているよ。
では、どんな時にも「みんなの意見」が正しいのかというとそうでもない。条件として筆者は、
正しい条件の下で正しい課題を与えられたら、多様性、独立性、分散性という予測市場の基本的特性は、必ずみんなの意見を正しい方向に導く。
と言っているよ。特に、前者2つの多様性、独立性は重要みたい。
独立性については、いろんなひとがお互いが影響や情報交換しない立場でいることが正しい方向に導くのだと。そうそう、空気を読んではいけないのだ。空気を読むということは独立性が損なわれること。空気を読むと正解には辿り着かないのかも。なんとなく分かるなぁ〜。
多様性については、似たもの同士の集団は、それぞれが持ち込む新しい情報がどんどん減ってしまい、学べることが少なくなるのだと…。

では、専門家の判断はどう考察されてるか。
専門家はまた、自分の見解がどれくらい正しいか推し測るのが、驚くほど下手だ。彼らも素人と同じように自分の正しさを過大評価する傾向にあることがわかっている。
と。さらには、自分がどれぐらい間違っているかすらまったくわかっていないと言い放つ。

分かりやすい例え。
曇りの日に傘を持って出るか否か、どう判断するか。天気予報の降水確率よりもみんなが信じるのは、街を歩いている人が傘を持っているかどうか。それだけのことで、結構うまくいったりする。まさに、専門家(降水確率)よりみんなの意見が優先される事例だよね。

もうひとつ、行列の例。
行列に割り込むのはよくない。でも、それを公権力で強制される訳でもないのに、割り込む人は少ないよね。みんなの自発的慣習が、強制もせず、多大な労力も費やさず、それでいて大勢の人を調整するのに不可欠な役割を担っているわけだよね。

グーグルの検索結果の表示順が、この「みんなの意見」は案外正しいという原則でシステム化されているということは周知の事実のようだよね。でも、それは多様性と独立性に担保されたもの。日本人の世間論では通用しないような気もするよ。あ〜、誰かが日本人のみんなの意見について、もっと深く考察してくれないかなぁ〜。阿部謹也先生だったら、やってくれるかなぁ〜。
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2010年03月30日

街場の現代思想/内田樹

『街場の現代思想』を読んだよ。内田先生的人生相談。

いつものように、内田先生が自分自身のブログや雑誌に連載で書いたものをまとめたものだよ。新潮新書の『日本辺境論』が売れているので、図書館でも内田先生の本は入手し難くなっている感じ。だから、在庫を発見した時はすぐに借りないと次の入手はいつになるか…といった感じ。

さて、本書。
前半は内田先生の考える「文化資本」を現代風に分析する。この「文化資本」。ひらたく言うと教養なんだけど。文化資本にも二種類あって、家庭環境などで知らない間に身についてしまったものと、学校などで後天的に身につけるものがあると内田先生は分析しているよ。さらに、後者の文化資本はどんなに頑張っても前者の文化資本にはなり得ないとも。
そう、これはもう格差の問題。そういう時代になったのだと思っていたら、そこに「負け犬」と呼ばれる階層が出現する。それにしても、内田先生が酒井順子を読んでいるとは…。あっ、そうか。内田先生、女子大の教員だったね。女性の生き方に多少は関わるお仕事だからね。
そうそう、その「負け犬」階層が、前者の文化資本を獲得しつつあるのではないかという考察。詳しくは本書に譲るけど、最後に、
だから「勝ち犬シフト」の諸君も、「勝ちとか負けとか、そもそも私は『犬』になんかなりたくない。私は『人間』になりたい!」という諸君も、すべからく本学に結集されんことを訴えて、ご挨拶に代えたいと思います。
には、ガクッ。神戸女学院大学は負け犬対策の超先進校だとか…。

後半は人生相談。
いろいろな内容に丁寧に答える内田先生。「丁寧に」というところがミソ。内田先生の話はその理路が丁寧なんだよね。数学の問題を解くように話が進む感覚。アッシが内田先生の本を読むのはその感覚が味わえるからなのではないかと思えてきた。
多分、この感覚が忘れられずにこれからも内田先生を読み続けると思います〜。
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2010年03月21日

名ばかり大学生/河本敏浩

『名ばかり大学生』を読んだよ。子供は育てたようにしか、育たない。

大学生の質の低下はいつの時代にも叫ばれていて、今のアッシが見ていても「近頃の学生は何であんなことをしているのかなぁ〜」なんて思うことがあるけれども、学生時代のアッシも大人から見たらそう思われていたかも。そう思うと、教育の問題って世代問題でもあるような。
結局、教育の効果って、すぐには表れない。気がついたら次の世代はこうなっていたっていうことが多いよね。気がついた時にはもう遅くて取り返しのつかないことになっている場合がほとんど。そこから対策を打つから、後手後手の感は否めない。構造的な問題なのかもね。

と、いきなり感想を展開してしまったけれど。本書の内容を紹介。

1章では、学力は本当に低下しているのかを、いろいろなデータから検証。結局、基礎学力のない学生が存在するのは確かであるとの結論。1970年代に一世を風靡した暴走族レベルの学力の高校生らが大学に進学してきているという分析。その要因として、「少子化と実質的な大学定員増」を上げているよ。

少子化の流れはどうしようもないとして、実質的な大学定員増は改善することができるのか。単純なことは、定員を減らせばよいということになるが、そこには学校の「荒れ」の存在を指摘する。
その現象が顕著に現れた愛知県の例が凄いよ。愛知県では高校への進学率を政策的に絞り、管理教育を徹底した。進学意欲があっても進学できない中学生が出てきた。その結果学校が荒れた。
その管理教育の最たるものが、「戸塚ヨットスクール」。そんな名前、忘却の彼方にあったけど、久しぶりに聞く言葉。そういう背景があったのか…。

そして、もうひとつの問題として指摘するのが、学力よりも序列を優先する思想。
世代別の学力を見ていくと、昔の東京大学の問題は易しく、現在の東京大学の問題はそれよりはるかに難しくなっている。つまりは、昔はちょっと勉強すれば、それなりに学力が伸びて東大にも入れた時代。
さらにもうひとつの事例として、現代の東京の有名私立中学の入試問題と1955年の和歌山大学の入試問題が比較され、前者の方がはるかに難しいという分析。
だから、学力云々より、格差の広がりが拡大しているということを指摘。既に12歳でエリートパスポートを手にするのだ。

最後の結論は、以下の引用がすべて。
私立中学は大学の求めるまま仕組みを作り上げている。だから、私立の教育が悪いのではなく、そういった仕組みにメリットをもたらす入学試験を延々と続ける大学教授、つまり「自分」が悪いのである。大学の教員が、大学生に問題を感じるならば、入学後教育と試験制度を見直してみるべきである。
そう、最後は大学が悪いという結論。そうかもしれない。自己を省みない大学。これも人災なのか…。
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2010年03月14日

公立校の逆襲/藤原和博

『公立校の逆襲』を読んだよ。官立校ではなく、公立校であるところがミソ。

リクルート出身の藤原和博氏が民間人校長として赴任した杉並区立和田中学校での仕事をエッセイ風にまとめたもの。同じ業界の人として、気になる存在だったけど、他の著書を読んで、一生懸命さが伝わってきていたよ。

藤原校長の改革をいくつか紹介。

[よのなか]科の授業はいわゆる総合学習なんだけど、「情報編集力」を身に付けるためのもの。テストで評価できるのは「情報処理力」。つまり、正解をすぐに引っ張り出せる力。これに対して、
二一世紀の日本でより大事になるのは、身に付けた知識や技術を組み合わせて人生を切り拓いていくチカラ、すなわち「情報編集力」のほうである。
といい、[よのなか]科の授業の中で、それを展開しているわけ。それを考えるとアッシなどは、いつこの「情報編集力」を身に付けたんだろ。社会人になってから?自然に?まだ、身に付いていなかったりして…。
そして、その成果が表れる。
思考のスイッチが入り、正解がただ一つではない問題に対しても、頭が働き始めるのだ。以後、それが何であろうと、自分に関わるテーマを示された瞬間から「自ら考えよう」とする態度が習慣として身に付いてくる。
そう、この「自ら考える」という態度が大切。残念ながら、大人でもそういう態度の人が少ないよね。

今の学校は生徒や保護者の多様性にどう対応するかが大きな課題。
先生の力には限度があるし、先生の本来の仕事に注力して欲しい。では、どうするか。地域を巻き込むということ。学校の中に地域本部を立ち上げ、地域の人、学生ボランティア、PTA、卒業生などが学校と関わっていく活動の場とする。
そう、公立校の強みを生かして、「私立を超えた公立校」だと藤原氏。そして、それは、お上からのお達し以上のことを行うことで、真の「公立校」となる。それは「地域校」とも言えるわけ。

藤原校長の取り組みは、日本の江戸時代の寺子屋とか、古代ギリシャで学問が行われたアカデミアに近いよね。学びたい人たち、教えたい人たちが集まる場所。学校の理想って、そういう所なんだろうなぁ〜。
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2010年03月13日

目立つ力/勝間和代

『目立つ力』を読んだよ。完全にタイトル負けの内容…。

勝間和代がまた売れている。お気軽に読めるのでついつい手が出てしまうのは不思議なんだけど、読んだ後に後悔するのもいつものこと。
やっぱりキャッチーなタイトルが功を奏しているんだろうね。そのタイルともさることながら、「インターネットで人生を変える方法」というサブタイトルもよく考えられているのかも。

でも、はっきり言って、本書の内容はブログの解説。企画から開設、運営の方法までを丁寧に説明しているよ。確かに、コンセプトを考えろとか、どう表現するかとか、などは技術的な話ではないから、あまりその点を説明するブログ解説書はないかもしれないね。
目的的には、ブログを活用して、人間の幅を広げていこう、1の力を10まで拡大しようとかそういうことだから。

では、勝間氏はブログをどのように考えているのか。
「ブログを作ること」が、そのまま、「思考すること」につながるからです。
ということ。自分の思考を整理し、可視化したのがブログだと言い、それにより思考の力が付くのだと。日記だと自分しか見られない。公開することで他人からの読まれることで、さらに力が磨かれるのだと。

ブログの「戦略を考える」ステップでは、5つの戦略が紹介されているけれども、結局はその戦略はブログだけに限らないことが分かる。この戦略的思考の癖をつけておくことは、一般のビジネスにもよい影響を与えると筆者。
確かに、ブログとかウェブサイトの構想は、ビジネスの練習問題として最適かもしれないね。タダでできる練習だし。

「表現する」ステップでは、こんなことが書いてある。
ブログで最も重要な価値観は「共感」です。すなわち、相手の心にスイッチが入らなくてはいけないのです。共感性が強い文章、すなわち、「わかる、わかる、私もそうだった」というものが、読者の琴線に触れます。
そう、ブログを読むなんて、ホントに自分の興味のあるものしか読まないよね。共感できれば、なおさら読む気になるのは分かるような気がする。文学作品じゃあるまいし、ネットでじっくり芸術鑑賞なんて難しいからね。

最終章で、勝間氏と小飼弾氏、青山直美氏でαブロガー対談。アッシはαブロガーの意味がよく分かっていないんだけど、対談を読むと、とにかくブログで人生を変えた人なのかも。
その中で、小飼氏のこの発言。
新しいことを始めるのは、ぐれている人たちからのほうが始めやすい(笑)。始める動機もありますし、時間もある。
と。青山氏は、「1995年頃にホームページを作っていた人たちって、電機連合(日立やソニー)で本業の不満を抱えている人たちが多かったと思える。」とも言う。
うん、これには納得。不満が無ければ、何もする必要が無いわけで、不満があるから何かをやろうという力になる。
う〜む。新しいことを始めたいという気持ちは大いにあるんだけど、時間がないのが問題だなぁ〜。時間は作るものだと言われそうだけど…。
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2010年03月11日

哲学的な何か、あと数学とか/飲茶

『哲学的な何か、あと数学とか』を読んだよ。数学の問題を解く時のワクワク感を再び。

図書館に行くと必ず立ち寄るのが、自然科学の書棚。科学一般から始まって、数学、物理、化学、生物とざっと回る。ある日、数学のコーナーで「哲学」という文字も見つけて、ふと手にしたのが本書。かろうじて数学という文字を含んでいるけれども、タイトル的にはおまけっぽい。
でも、中をパラパラとめくってみると、書かれている内容は「フェルマーの最終定理」。お〜、あの「フェルマーの最終定理」がもう一度読めるというワクワク感でいっぱいになったアッシ。

さて、本書。
基本的にはサイモン・シンの『フェルマーの最終定理』と同様なストーリー。数学史に基づいた史実だからね。
ちょっとした脚色として、数学の未解決問題を「悪魔」に見立てたこと。それは、
そいつは、人々の好奇心を刺激し、学問の発展を担う一方で、しばしば、人々を魅了し狂わせ、数多くの人間の人生を飲み込んできた。フェルマーの最終定理は、そのなかで、もっとも恐ろしく強大な力を持つ悪魔である。
と表現する。そして、悪魔は容赦しない。解けそうで解けないフェルマーの最終定理。解けそうになると、次から次へと難問を振りかざし、人々の行く手を遮る。それなのに、一生を掛けて、この難問に取り組む数学者がいる。人生の最後までこの悪魔と闘って、死んでいく。

悪魔と闘う数学者たちにさらに水を浴びせかけたのが、「ゲーデルの不完全性定理」。それは、
数学者たちは、「もしかしたら、今使っている数学体系は、明日、矛盾が見つかって崩壊するかもしれない」というリスクを常に背負いながら、数学を続けなければならないのである。
という結果をもたらす。これは「フェルマーの最終定理」は、「どんなに頑張っても解けない問題かもしれない。」と同意なわけ。挑戦する気が萎えるし、誰もそれに挑戦するのを薦めない。

そして、本書の中で最大のワクワク感は、ゲルハルト・フライが「谷山=志村予想」と「フェルマーの最終定理」がつなげることを説明した瞬間に最高潮になる。スッキリと美しい論理展開、驚愕の結論。わずか数ページだけど、一気に読み切り、アッシまでも達成感を感じる瞬間。

最後の登場は、ワイルズ。
のちにワイルズは、「谷山=志村予想の証明がフェルマーの最終定理につながるというリベットの証明を聞いたとき、風景が変わった」という言葉を残している。
そう、もやもやの中に生きていた人生が一瞬で希望が持てる人生に変わった瞬間だったのかもしれないね。それでも、8年間も考え続ける必要があったんだから…。

「フェルマーの最終定理」という悪魔は倒れたけれども、数学の世界にはまだまだ悪魔が住むという。それでも、悪魔に魅了される数学者たち。またいつか、そんな彼らの冒険譚が読めることにアッシは魅了されています〜。
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2010年03月07日

バカヤロー経済学/竹内薫

『バカヤロー経済学』を読んだよ。日本の政治にバカヤローって言いたい。

サイエンス・ライターの竹内薫氏が小学生になったつもりで、某経済学者(本書では“先生”という名で登場)からゼロから経済学を学ぶ本。
ただ、小学生にはかなり高度な内容だし、発刊当時の政治の裏側まで、ある程度社会情勢を知っていることを前提条件に、その理論的・政治的な意味を勉強するといった感じ。

まずはガイダンス。いきなりNo Free Lunchというキーワードが登場。直訳すると「ただ飯(昼食)はない」。世の中にそんなおいしい話はないことをし、自覚すべし。十分分かっているはずなんだけど、どうもふとした隙に抜け落ちる人が多いみたい。
もうひとつのキーワードはインセンティブ。こちらの方が経済学的な意味合いは強いよね。本書に登場する経済活動をインセンティブの視点から見ると理解しやすいし。

さて、経済学の基礎。
まずは「合成の誤謬」。
節約っていうのは、家計の中では正しい。でも全員がそれをやったら、経済活動が活発化しない。<中略>だからこそ景気というのは、守りを重視する家計よりも攻めを重視する企業に頼ったほうが、効果が期待できるんですよ。
つい、自分だけの立場を考えるとミクロ経済重視になるよなぁ〜。でも、民主党はこれで政権を獲得したような気がするんだけど。

消費税の仕組みも分かりやすく解説。取り引き上で前の人の売り上げがきちんとわかるような賢い仕組みになっていて、ウソの申告ができないようになっているんだね。人の税金にかこつけてウソをつくと、流通のシステムから排除されてしまうっていうわけ。互いに監視役になるという巧妙なシステム…。

“先生”は年金問題にも切り込む。
竹内氏が、年金のような社会保険料と税金の違うを問う。確かに同じようなものに思えるけど。先生は、アメリカの例を上げて、結局は税金とあまり変わらないものだと回答。
本当は税務署が取ればいいんだよね。アメリカじゃ、社会保険料を払わないと税務署に財産没収されるんですよ。国税の徴収法とまったく同じ考え方なんです。
同じような仕事なんだから、同じ役所がやればいい。まったくシンプルで合理的。でも、日本ではそれができない。社会保険庁の職員だけでなく、厚生労働省が反対する。天下り先がなくなるから…。役人天国、ニッポン。

最後は政治の話。政治主導の話は、民主党から始まったような印象だけど、実は安倍首相の時から始まっていたと。でも、官僚を叩いていたら、社会保険庁の年金記録の杜撰さを暴露するという自爆テロ。結局、政治家が責任を取らされた格好だったのか…。小泉さんの郵政改革は選挙で民意を問うという形でうまくいったけど、安倍さんのときに逆襲されたのかもね。

民主党政権が発足して半年以上経つけれども、結局何も変わっていないような。日本の政治家、官僚の体質はそうそう変わるものではないのだろうね。本書に書いてあるけど、いっそ大連立を実現して、そこからもう一度分かれた方がいいのかも。あ〜、それでも官僚は変わらないか…。政治、官僚、税金、金融、財政etc、世の中の複雑な仕組み、いったい誰が全てを理解しているんだろうなぁ〜。
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2010年03月06日

偽善エネルギー/武田邦彦

『偽善エネルギー』を読んだよ。エネルギー無くして生きられない人類。

ご存知、武田邦彦先生の「偽善」シリーズ?第2弾。前作はエコをテーマにどちらかというと生活一般の話題が中心だったけど、今回はずばりエネルギー問題。
スーパーのレジ袋を削減しても、割り箸をやめてマイ箸にしても、電気をこまめに消しても、世界中が使うエネルギーに比べたら、微々たるもの。だから、エコを語るよりエネルギーを語るべしという本書の趣旨はよ〜くわかる。

第1章は現状のエネルギー状況を整理する。
まずは石油の問題。筆者の見解としては、完全に無くなることはないだろうと。これには、需要と供給の経済学的政治的な視点もあるんだけど。つまりは、たくさんあると言えば安くたたかれ、足りないと言えば価格が高騰し売れなくなる。結局、売る側からしたら、あるともないとも言わない方がいいってことになるわけ。
科学的には、「使いやすい石油」は使われていくけれども、「使いにくい石油」をどう使いこなしていくかという問題も。こういう技術的な課題って、将来的には解決されていくんだろうけれど。

第2章は食糧と温暖化の問題。特に食糧と石油との密接な関係が面白いよ。
世界の穀類の作付面積が約40年前から増減がなく、それなのに穀類の生産高は2.5倍になっている。これは何を意味するのか。
原因は、石油を何倍も使って農業をしてきたからです。たとえば、日本でお米を作るときの石油の消費量は約5倍になっています。トラクターを動かし、農薬を撒き、そして化学肥料を使うようになったからに他なりません。環境運動家の中には、農薬や化学肥料を使わない方がよいと言う人もいます。確かにその通りですが、もし農薬や化学肥料を使わずに今まできたら、世界で相当の人が餓死したことが予想されます。
これは何を意味するか。そう、石油が無くなると餓死する。日本の穀類自給率は25%だから…。

第3章は日本のエネルギー問題。石炭が復活する可能性なども示唆しているのは新たな視点。そう、石油より石炭の方がまだまだあるみたい。あと、「使いにくい石油」をいかに使いやすくしていくかという点も。
もうひとつは原子力発電。チェルノブイリのようなボロボロの原発は使わず、「軽水炉」を使えば安全であり、さらには石油、石炭を焚く火力発電所よりも安全であると。『原発を考える50話』とはニュアンスが違うような…。さらには原発の問題は人災であるとし、「秘密主義」と「専門主義」を問題にしているよ。あと耐震の問題も大きいかも。これも人災なんだけど。

結局、「エントロピー増大の原理」がある限り、そして、人間の向上心がある限り(まさに本能なんだろうけど。脳科学者に言わせると脳の喜びがある限り)、エネルギーが減ることはないんだろうね。本書に書いてあるけれども、戦前の生活に戻ることなんて、誰も嫌だろうから。
地球の歴史を考えたら、人間のインパクトなんてごくちっぽけなもの。やっぱり、そこに結論が落ち着くなぁ〜。
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star海水の熱容量は大きい
starそれでも、本書を評価します
star読み物としては面白いけど・・・

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2010年02月27日

遠野物語へようこそ/三浦佑之,赤坂憲雄

『遠野物語へようこそ』を読んだよ。民俗学の世界にようこそ。

『遠野物語』。筆者の柳田国男と共に、子供の頃から名前は聞いていたけど、その内容については、ほとんど知らず。遠野という地名も多分東北方面だろうと予測をつけるだけで、実際の地理的位置も知らず。
そんな訳で、なんとなく気になり続けていた『遠野物語』だったけど、ついにちくまプリマー新書から本書が発刊されて、すぐに読んでみようとなったわけ。

本書の全体的な構成としては、「はじめに」で『遠野物語』の成り立ちと作者の柳田国男についての解説。それ以降は、『遠野物語』に出てくる話をピックアップして解説するという感じ。各章の冒頭には原文が載っていて、多少言葉が古いから読みにくい感じはするけれども、解読不能ではないよ。よく読んでみると素朴で味わいのある日本語って感じもするし。

明治時代、農商務省の官僚だった柳田国男は明治41年ごろから民俗学へ傾倒していく。そのきっかけとなったのが、九州への視察。そこでは、それまで机上で学んできた農政学の知識や、官僚として策定する農業政策だけでは掌握しきれないさまざまな問題を見出したのだと。
たとえば、天草での習俗を見聞し、それが「今日の如き極めて新しい文明社会を風俗として併存している状態」は、単純な法則だけで社会の行動を考えようとする「書生の想像には及ばない所」だと述べています。
そう、脳で考えるのは脳の範囲でしか考えが及ばずってこと。まさに「バカの壁」がここにも。

さて、『遠野物語』に登場する話には色々なものがあるけれども、例えば「神隠し」。
たとえ、ただひとりのまな娘を失った淋しさは忍びがたくとも、同時に、それによって「家の貴さ、血の清さ」を証明できたばかりか、「眷属郷党(地縁、血縁の深い一族)の信仰」と統一することができたのではないか、それが神隠しではなかったのか、と。
本書の筆者は、それを「家や村という共同体のアイデンティティを維持・更新してゆくための、たとえば語りの仕掛けであったのかもしれません。」と言っているよ。うん、家族の失踪を世間に晒さないために物語を作ったとすれば、それはひとつの手法だよね。

さらに「棄老伝説」も。いわゆる「姥捨山」。ただ、『遠野物語』の姥捨ては、普通に語られる姥捨てとはちょっと違うよ。姥捨山は里の近くにあり、老人たちは昼間は里に降りてきて、畑仕事にせいを出したりする、と。ちょっと、イメージが違うよね。でも、これが現実の姥捨てなのかも。
『遠野物語』から百年の歳月を経て、わたしたちはみな、老いや死から真空パックのように隔離されて、生きることの意味を忘却しているのかもしれません。老いも死も日常から遠ざけられ、リアルに感じることができずにいます。死者たちは、魂は、行き場もなく彷徨しています。この時代が、『遠野物語』の時代よりも幸福である、とためらわず断言できる者が、いったい、どれだけいることでしょうか。
そう、老いも死も現実なのに。それをただ覆い隠すだけの現代。なぜ、それを真正面から見つめようとしないのか…。ただ、アッシ自身だって、中高年になって、現実として目の当たりにせざるを得ない歳だから、こんな文章に反応するようになったのかもしれないね。
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2010年02月24日

下流社会/三浦展

『下流社会』を読んだよ。タイトルもサブタイトルも大げさすぎて期待外れ。

2005年に初版だから、かれこれ5年ほど前のベストセラーだったと思う。「下流」というキーワードに惹かれて、しばらくの間、チェックしていたもの。
筆者の三浦展氏はもともとはマーケティングの人。マーケティングの手法はいいんだろうけれども、そこから出てくる結論がそれほど驚くべきほどのことでもなく、マーケティング素人のアッシでもだいたい想像できること。
著作を見ていて気がついたんだけど、『下流大学が日本を滅ぼす!』も三浦氏の著作。こちらも内容の薄い本だったような。

さて、本書。
分析としては、人々の階層意識を世代別にセグメントし、これからの日本人がどういう方向に向かうのかを考えるという感じ。
世代のひとつとして新人類世代があるんだけど、その生年がアッシとドンピシャリ。アッシ的感覚だと新人類とはアッシの世代よりさらに10年以上若い世代だと思っていたんだけど…。
ただ、この世代分類を見ていると、昭和ヒトケタ、団塊世代、新人類、団塊ジュニアときれいに15年毎に分類されているような。つまりは、昭和ヒトケタの子どもが新人類で大海世代の子どもが団塊ジュニアとなって、それぞれが対比されるみたいな…。

で、延々とデータの提示とその説明が続く。あくまで、説明であり、分析とか解説までは行かない感じ。

ときどき登場するキーワードが「自分らしさ」。階層意識が「下」だと判断する非正規雇用の若者ほど、「自分らしさ志向」だと筆者。
もしその不安定で不満の多い選択が自分らしさと引き替えになされているとしたら、われわれは、過去30年以上にわたって社会の主流的な価値観となった「自分らしさ」という、まるで青い鳥のような観念を、一体今後どのように取り扱うべきなのか。そして、すでにその青い鳥の虜になった団塊ジュニア世代以降の若者にどう対処すべきなのか。われわれは今、そうした問題を突きつけられている。
そう、青い鳥を追い求めることに、どういう意味があるのか若者たちは理解していないんだろうね。「自分探し」などと言って、旅に出る若者がいるけれども、やっぱり働いてみないと働きたいことなんて分からないんだよ…と新人類のオッサンは思うわな。

同じような意味合いで、こんな記述も。
しかし「バカの壁」は知らぬ間に築かれる。そして築かれても、その存在に誰も気がつかず、壁の中の快適さに耽溺する危険がある。「バカの壁」はまた「下流の壁」でもあるかも知れないのだ。
と。そう、この表現はすごくイメージが湧くよね。

さて、アッシとしては内田樹氏の『下流志向』風の内容をイメージしていたんだけれども、それほど深く分析や考察が行われているわけでもなく、「おわりに」では解決策風も書かれているけれども、アッシ的には納得できず。
続編が出ているようで、読むか否かちょっと思案中です〜。
下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)
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posted by りすじぃ at 06:31| Comment(0) | TrackBack(1) | 30社会科学