2008年05月31日

科学の扉をノックする

『科学の扉をノックする』を読んだよ。軽めの科学読み物が流行っている?

作家・小川洋子氏が科学者を訪ね、科学の話をレポートする本。NHKの「爆笑問題のニッポンの教養」のスタンスかも。

さて、登場する科学者は様々。天文学者とは、宇宙の始まりを語る。鉱物学者とは、なぜか虚数の話題。鉱物の構造を分析する時に複素数が使われるという。だから、この鉱物学者は虚数は自然界に存在するのだと。
そして、バラの花に似る鉱物の話のところで、作家らしい表現が登場する。
鉱物と植物、縁遠いはずの二つの世界に、同じ構造を持った形が存在する。ある統一された法則が、交わるはずのない鉱物と花を、見えない絆で結び付ける。<中略>それはきっと、広大な自然を統制するにふさわしい、あまりにも美しい数式であるに違いない。
『博士が愛した数式』に出てくる台詞のよう。

遺伝の話では、“サムシング・グレート”という言葉がキーワード。すべての命の元となるようなものだという。それは決して石ころのようなものではないと。←ここはアッシとちょっと違う。命の元は石ころのようなものでもいいんじゃないかなぁ〜。

大型放射光施設「スプリングエイト」では、こんな表現も。
人間の目はちっぽけなものだが、人間より大きな像でも富士山でもお月様でも見ることができる。なのに目よりもずっと小さい世界を見ようと思ったら、人間の何倍もの大きさの装置を使って、目にも見えない速さのエネルギーを生み出さなければならない。これは何と、美しい矛盾だろうか。
と。

話は粘菌、遺体科学と続く。最後になぜか阪神タイガースのトレーニングコーチが登場。このコーチが何度か「スポーツは所詮、人間がやるものですから」と言う。そう、科学的な解明は進むけれども、科学は精神と肉体というメディアがあって成り立つもの。
そう考えると、やっぱり人間って凄いなぁ〜。
科学の扉をノックする
科学の扉をノックする小川 洋子

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2008年05月25日

無限論の教室

『無限論の教室』を読んだよ。無限とはなんとも取り扱い難いもの…。

大学の講義風に書かれているよ。どうやら、科目的には「哲学」みたい。教員は、タジマ先生。学生は、タカムラさんという女性と「ぼく」。そんなシチュエーション。

まずは「アキレスと亀」の話から。ゼノンのパラドックスだけど、要は収束と発散を考える。そこから、実無限と可能無限の考え方。タジマ先生は可能無限派だとか。

そして、「自然数と偶数はどちらが多くあると思いますか」というタジマ先生からの問いかけ。ここで集合の濃度という考え方を学ぶ。←これって、哲学じゃなくて完全な数学だよね。
この後、カントールの無限集合論について学ぶんだけど、その前に実数論。べき集合とか、自然数との濃度の差とか、学生のときに習ったような忘れたようなことがたくさん登場。

2の平方根の無限可能性についての話が面白いので、引用。
ルート2というのは、ひとつの完結した数につけられた名前ではなく、この開平法というやり方につけられた名前なのです。一般に、無理数と言うのは、こうしていつまででも少数展開を続けていく規則の名前なのです。
そう、ここでは、無限とは有限のものと同じ手法で論じるものではないということを匂わせているのだろうね。

パイについても同じ。
パイというのはその少数展開を順番に作り出していく規則であり、展開されていく少数は、その規則に従って構成されて初めて産声をあげる存在者なのです。
これは、無限は虚構であり、実在しないという結論に繋がるわけ。

講義の最後は、ゲーデルの不完全性定理を証明するんだけど、ここまで来ると分かったような分からないような。メタ数学とか対角線論法とか、新たな概念と手法で、「ぼく」もアッシもアップアップ。

最後のタジマ先生の言葉が象徴的。
無限は完成を拒んでいます。
と。人間はつい完成したものを求めてしまうのになぁ〜。だから、無限は超越的なんだろうね。
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2008年05月24日

ダ・ヴィンチの謎 ニュートンの奇跡

『ダ・ヴィンチの謎 ニュートンの奇跡』を読んだよ。宗教と科学は一体なのか…。

宗教と科学がテーマ。一般には対立する概念だと思われているけれども、実はそうではなくて、宗教がなければ、科学は生まれなかったのかも…。

前半は、古代ギリシャの数学について。ダ・ヴィンチコードに登場するフィボナッチ数列、黄金比、三角形の不思議などを紹介しているよ。本書のテーマとはかけ離れた話題のような気がしたけど…。

中盤から突如として、ダ・ヴィンチ作の「岩窟の聖母」を話題にキリスト教の話に転換するよ。特に、キリスト時代のイスラエル周辺の話。アッシにはよく理解できん。登場人物も多いし、○○派とか××派とかの集団もたくさん。覚えきれない。
特に、人名。ヨハネという人が出てくるけれども、さっきの話のヨハネは今出て来ているヨハネとは別人物だとか…。もうダメだ。

本書のキーワードのひとつが「認識(グノーシス)」という概念。
グノーシス思想はそもそも神の領域の「認識(グノーシス)」を求める試みだから、神の子としてのイエスや、その弟子のペトロから始まる法王(教皇)や枢機卿、大司教など、カトリックにまつわるすべてのものが、ダ・ヴィンチの視野には入っていなかったと考えることも可能だろう。
とまで言っているよ。つまりは、イエスがどんな人物かということは関係ない。神の原理に一歩でも近づくことが重要で、それはカトリックからの離脱になるのだと。

そして、ニュートン。彼もグノーシス思想の持ち主だったとか。リンゴの落ちるのを見て、ここに神の原理を感じたのは、グノーシス派ならでは発想なのだと。

さらに、ダ・ヴィンチとニュートン。
彼らはつねに、神とともにあった。神の領域にわが身をひたすことを、唯一の喜びとして、科学の探求に生涯を捧げたのだ。
と、ここで神と科学が繋がったよね。神があればこその科学だったんだよね。そういう意味で、科学と対立するのは宗教ということで正解かもしれないね。

一点だけ反論。筆者は、日本や中国で科学が発展しなかったのは、キリスト教のような絶対的な神が存在しなかったからだと言うけれども、神の存在云々というより、日本に科学が発展しなかったとは思えないんだけど。関孝和だって、微分の概念に達していたわけだし。ヘンだね。
ダ・ヴィンチの謎 ニュートンの奇跡
ダ・ヴィンチの謎 ニュートンの奇跡三田 誠広

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star宗教と科学は一つ?偉人たちの功績がつながります。
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2008年05月18日

こころの情報学

『こころの情報学』を読んだよ。情報という概念はいったい何なんだ〜。

情報というと、すぐに思い浮かぶのがコンピュータ。コンピュータに蓄積された情報を、処理したり検索したり。そんなイメージが情報にはあるけど、それは単に「機械情報」という狭義の情報の概念。本質的な情報の概念とは…ということを考えさせてくれる本。
難しい論理も展開されているけれども、アッシ的には何となく分かるという理解までは出来たつもり。

「情報学」というフレーズに惹かれて、「こころ」の意味を深く考えていなかったけれども、本書を読んでみると、まさに「情報」と「こころ」は密接に関連しているみたい。
例えば、
情報は生命とともに誕生したのです。
と云う。そういう意味で、情報とは歴史とか時間の概念に沿ったものであると。

「機械の心」の章では、人工知能、オートポイエーシス理論など、機械がヒトにいかに近づけるかという話。

「動物の心」の章では、動物の行動を元に、動物の心とヒトの心の違いを捉える。
ホモ・サピエンスの唯一の武器は「予測し計算する頭脳」でしたが、その能力は同時に「未来への不安」という副産物を生むことになりました。明日の計画をたてることは、明日襲い掛かってくるかもしれない不安を抱え込むことでもあるからです。これが途方もないストレスを生むことは言うまでもありません。
時間とともに情報を抱え込んでいるのがヒトってことだね。
そう、ヒトは情報を処理できるものとして捉えてしまう傾向があるよね。情報の本質とはそういうものではないのだと。それについて、警鐘を鳴らしているのだと思うよ。

「サイバーな心」の章では、情報洪水はわれわれをどこに連れて行くかについて語る。
本来の<情報>とは生命の“意味作用”であり、社会的動物であるヒト特有の<言語>をはじめとする記号表象はその発展形として生まれてきたのですが、記号の意味内容が規範化されるにしたがって、意味内容をはぎとられた記号のみが機械的に複製・配布されるようになってきました。
確かに、この機械情報はヒトの心にはほど遠い存在だよね。だからといって、機械情報に振り回されない方法ってあるのか…っていうと難しい問題だけどね。自分自身がどう向き合うかなんだろうけど。
こころの情報学 (ちくま新書)
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2008年05月14日

早わかり世界の文学

『早わかり世界の文学』を読んだよ。世界の文学っていうより、清水センセー流文学論。

清水センセーの3つの講演とそれに対する補講という組合せで構成された本。

講義Iは「パロディは文学でつながっている」と題して、パロディ論。
小説家は過去の作品に影響されて、作品を作っていくという。そして、世界の文学作品を例にその説明。ホントだ、過去の影響を受けて書かれただろうと思われる作品が多数。
清水センセーが上げた例として面白かったのは、『ドン・キホーテ』。17世紀のヨーロッパで大流行した騎士道物語のパロディだという見解。そして、その『ドン・キホーテ』のパロディが『男はつらいよ』の「寅さん」。もうひとつ、パロディとは言えないけど、『ロビンソン・クルーソー』の影響を受けて書かれたのが、『ガリバー旅行記』だと。
と、結局、清水センセー、何が言いたいかというと、文学は繋がっているのだと。

講義IIは「読書で学べること」。
要は読書の効用は、いろいろなことが学べること。『ファーブル昆虫記』で論理性を、『坊っちゃん』では社会を学べると。

講義IIIは「作文教室と創作方法」。
清水センセーが長年やってきた小学生対象の作文教室の話題から、文章の上達法までを伝授。さらには創作方法まで。『小説家になる方法』と重なる部分もあったけど。
で、清水センセーのアイディアはどこで生まれるのか。ヒントになる文が以下の引用か…。
つまり、人間のやることを全部見ていて、私は面白いことだなと思っている。面白いなと思うと、次の瞬間、そういうことを書こう、と。
<中略>
せんじつめていけば、人間の面白さを書こうとしているんですよね。

作家先生というものは、幾つかのネタを持っていて、それを組み合わせたりしているんだなぁ〜ということも今回の発見のひとつ。講演記録だから多少はそういうこともあるんだろうけど。
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posted by りすじぃ at 06:23| Comment(0) | TrackBack(1) | 90文学

2008年05月11日

すべては音楽から生まれる

『すべては音楽から生まれる』を読んだよ。音楽を持ち上げ過ぎの観が…。

去年くらいから、音楽に関する本を出している茂木さん。アッシも音楽が嫌いじゃないので、そういう意味で楽しみだった本書。図書館でも人気で予約を待ち数ヶ月。

音楽を茂木さん的に捉えると…というのが本書のポイント。そこはやはりクオリアから入る。楽譜というデジタルなものから、あの素晴らしい音が発せられ、「今、このとき」を過ぎていく。すぐに過去のものになってしまうのに、記憶に残ったわずかな情報から人間はクオリアを生み出していく。その中に感動がある。
うん、以前から茂木さんのクオリアに関する議論をを読んでいるので、すご〜くよく分かる。イメージが沸く。確かに音楽を聴くと行為は不思議なもの。ひとつひとつの音をデジタルとして捉えることはできないのに、それでも感動が残る不思議さ。クオリアのおかげ。

例えば、≪G線上のアリア≫を聴くと敬虔な美しい気持ちになると、茂木さん。
強いられるのでなく、自らの内から生まれてくる、祈りにも似た感情。そっと目を閉じ静かに頭をたれたくなるような、神々しさ。もはや言葉では言い表せない。そして、言葉にならないからこそ、信用できる。それが祈りのような音楽の正体だ。
…と。「言葉にならない」とはデジタルでは表現できない部分。まさにクオリアの範疇かも。

秘仏の話題も面白い。めったに公開のされない秘仏。「見ることができない」とはまさに音楽と同じだと。
本体は、見えない。聞こえない。それをいかに想像するか、ということ。聴くということの本質がそこにある。

音楽を聴く時、人間は何を考えているんだろと思う。よ〜く考えてみると、ますます分からなくなる。クオリアですべてが解決するのかとは思うけど。

本書の最後に「ラ・フォル・ジュルネ」の主催者であるルネ・マルタン氏との対談があるけど、これは余計なような。逆にいうと、これの為に本文があるような気も。だから、冒頭の「持ち上げ過ぎ」という印象にもなるよね。残念。
すべては音楽から生まれる (PHP新書 497)
すべては音楽から生まれる (PHP新書 497)茂木 健一郎

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2008年05月04日

「ビミョーな未来」をどう生きるか

『「ビミョーな未来」をどう生きるか』を読んだよ。気になる杉並区和田中学校長が著者。

中学生に向けて、これからの世の中の考え方とか、その中でどのような仕事を選択していくかを説いた本。大人のアッシでも、整理されていて分かりやすいよ。

中学生ともなれば、将来のことをまともに考えられるようになるんだろうけれども、それでも普通の子は、小学生の時の夢は現実的に見ると厳しいことが感じられてくるよね。
それで、結局、よく考えないままに、サラリーマンにでもなるか…なんて、お決まりのコースを進んでしまう。
でも、よくよく考えてみると、職業なんて山ほどあって、なんにでもなれるのが今の世の中だと思う。
じゃ、そのなりたいものになるには…。

この回答に、筆者は「クレジットを高める」という表現を使っているよ。
周囲からの「信頼と共感」とか、大人としての「信任」といっているものを総称して、僕は「クレジット」と名付けているんだ。
学校での活動は、すべてこのクレジットレベルを上げるためのものだ…と筆者。RPGの「経験値」と同じだ…とも。
そして、そのクレジットレベルを上げるためのチカラは、「集中力」と「バランス感覚」。これを小中学校の時に身につけて欲しいと。

「仕事」への向き合い方も。与えられた仕事自体を「好き」になるコツを披露。
それは、与えられた仕事を自分で工夫して、自分ライクに変えていくこと。自分の最も得意とするキャラで勝負することだ。
そうそう、同感。

今までの「成長社会」とこれからの「成熟社会」の違いも説く。そして、「成熟社会」で生きるためのチカラは「情報編集力」だと。
「情報編集力」というのは、「正解」よりも「納得解」と導き出すチカラです。
…と。

「クレジット」という考え方。サラリーマン生活24年のアッシにも十分通用する考え方だよね。「高クレジットサラリーマン」を目指します〜。
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star大学生や20代前半の方にも良いのでは。
star将来の夢は?と聞かれたら?
star夢は逃げない。

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posted by りすじぃ at 08:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 30社会科学

2008年05月03日

満員電車がなくなる日

『満員電車がなくなる日』を読んだよ。なくなるのも寂しいような気がするけど。

満員電車をなくすための提案・提言が、3つのポイントで書かれているよ。

一つ目は運行方法のイノベーション。信号システム、総2階建て車両、3線運行、鉄輪式リニアなどの技術的な話題。総2階建て車両以外は現実的かなぁと思うよ。特に鉄輪式リニアは面白い。現行の電車の弱点(加減速力が弱い)を克服している点など、将来性があるかも。
これらの方策が実現すれば、輸送力は現行の3〜5倍になると云う。
ただ、問題はコストだ。

そこでコストの問題を考える。
本書は「満員電車の歴史は運賃抑制の歴史」という仮説を置く。確かに他の交通機関と比較すると電車は格安のような。だから、座れなくても文句は言わないし、多少の混雑も我慢する。これがタクシーだったら我慢できないだろうね。
その観点からの筆者の提言は、着席と立ち席の値付け。座る客は料金を高くする。受けるサービスで料金が変わる。普通の市場原理だよね。
その料金の徴収はICカードを使うという方法。今の時代だからこそできる提案。JRならすぐにもやりそう。

3点目は制度の問題。
ここでの主な話題は道路特定財源のこと。電車のライバルはやっぱり自動車だ。それを考えると、確かに自動車は社会の仕組みの中で優遇されているかも。贅沢品が一家に1台あるんだからね。

さて、満員電車は本当になくなるか。そりゃ、ゆったり通勤は理想だけど、満員電車に乗ると「やっぱり、俺サラリーマンなんだよなぁ。皆さんもこれからお仕事なんだよなぁ。今日も多少は頑張るかぁ〜。」という気にもなる。だから、冒頭でも言ったような寂しさを感じるかも。
サラリーマン根性が抜けきれないね、アッシ。
満員電車がなくなる日―鉄道イノベーションが日本を救う (角川SSC新書 29)
満員電車がなくなる日―鉄道イノベーションが日本を救う (角川SSC新書 29)阿部 等

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star通勤ストレスが家での活力を奪う。
star面白い発想が多いけど
star「提案はユニークだが、鉄道事業者寄り」に対する回答

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posted by りすじぃ at 13:44| Comment(0) | TrackBack(1) | 60産業