2008年06月29日

哲学の謎

『哲学の謎』を読んだよ。『無限論の教室』を読んでからの気になる1冊。

文字通り、哲学の本。哲学者たちの小難しい議論が書かれているわけではなく、対話形式になっているから、比較的読みやすい。話されるテーマも身近なものが題材で、いろいろと例えながら思考実験を重ねていくよ。それでも深く考えていくと、意外な結論が導かれたりする。それがまた面白いよ。

例えば、意識と実在について。我々は意識を持って、ある事象を捉えるとする。これは実在とはまったく位置関係を持たないわけ。…となると、実在の世界はない…という結論が導かれる。不思議だね。分からないね。

「時の流れ」についても。
想像してほしいのだが、川岸が見えないほど広い川で、川の流れが完全に一様・均一であったとする。君はそこを流れにまかせて船で下っていくとして、いったい自分が川を下っていることがわかるだろうか。
という命題。川の流れを認める手掛かりがないとしか言えなくなる。「時の流れ」もこれとまったく同様ということ。
われわれはそこに「流れ」など認められないはずなのだ。
…と。これもまた不思議。この議論は、
われわれは「いま」から逃れられない。永遠に「いま」なのだ。
と発展していくよ。

面白かったのは、天涯孤独のロビンソンという人物を想定した思考実験。彼に規範はあるんだろうか?と。
彼は「赤いりんご」を「灰色のりんご」と捉えているかもしれない。そして、狂気も正常も有り得ない。何をどう解釈してもよいからだ。これまた、なんとも不思議な感覚。

個物から一般観念を導き出せるか?という議論も面白い。個物としての犬を何匹見たとしても、「犬」の一般観念は導き出せるだろうか?これって、無限の話にも近いような。帰納法を使う?アッシには想像できないけど。

行為と意志についての議論も。行為の能動性を意志に求めると、「腕を上げる」という行為の為に無限に意志しなければならなくなると。これは、究極的に、行為を始めることが不可能になっていく。

こんな風に、いろいろと考えていくと、不思議なことばかり。でも、まじめに考えた結果なんだから、受け入れなければならないのかも。
それでも、考え続けるのが重要のような気がするよ。人間なんだから。
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posted by りすじぃ at 02:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 10哲学

2008年06月28日

死の壁

『死の壁』を読んだよ。『バカの壁』の続編?

人間の死について考える。まずは前提条件。それは、人は必ず死ぬということ。究極の前提条件だよね。

そこで、「なぜ人を殺してはいけないのか」という命題。これは人間中心主義という考え方に問題があるという。人は自然というシステムの一部であるはず。自分の臨床の日すら予言できないのが、人間であると。

そして、「不死」について。
近代化は、人間が自分を不変の存在、すなわち情報であると勘違いしたことでもあるのです。それ以来、実は人間は「死ねない」存在になってきました。
人間が情報化してしまうと、それは不変のものになってしまい、生まれた時の私も今の私も同じだと考えてしまう。そんなことは、有り得ないのにね。

医学的な死についても考察する。生死の境は何なのか。極論なんだけど、骨になったとしても、身体というシステムで繰り返されているサイクル活動は止まっていないものがあるかもしれないという。つまりは、医学的な死については定義できず、社会的な死のみが定義されているだけな訳だ。

話は日本人の死についての考え方に及ぶ。日本人にとって死とは、世間を外れることだという。人間という言葉がまさに「世間の人」を意味している。
その考え方からさらに発展すると靖国問題に辿り着く。世間から外れてしまえば、人ではないのだから、神様としておまつりするのが日本人。中国人は死んでもそいつはそいつだという考え方。
あ〜、解決できるとは思えない。

人命尊重にもユニークな見解。「人の命は地球より重い」という理念について。
その理念がタテマエなのはいうまでもありません。要るかどうかわからない橋を架けるのに、工事関係者は何人も死んでいるのです。車社会になって年間一万人も死んでいるのに、車を無くそうという人は少数派です。
と。言われてみると納得。

死について、こんなに考えさせらる本は初めてかも。それも世間と密接に関連しているなんて。
『バカの壁』の続編というより、養老先生的世間論って言った方がいいかもしれないなぁ〜。
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posted by りすじぃ at 09:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 90文学

2008年06月26日

新しい道徳

『新しい道徳』を読んだよ。世の中は変わっているのに、道徳教育は変わらない…。

小学生の時に「道徳」という科目があったね。副読本のようなものを読んだりした記憶があるけど、他の教科の補修の時間になったり、普通のホームルームになったりしたことが多かったような…。でも、「道徳」というと、なんとなくうしろめたいことは出来ないなぁ〜って気分だった。でも、ただそれだけ。っていうか、当時の小学生にはそれでも十分だったのかもしれないけど。

筆者は、「成長社会」から「成熟社会」に変わった現代では、道徳のあり方にも変化があると指摘。そして、社会が要請する能力も「情報処理力」から「情報編集力」に変わっていると。本書には、そんな事例がたくさん有るよ。

例えば、「正解」と「納得解」の違いについて。「成長社会」では「正解」を求めることが要求されたけれども、「成熟社会」では「納得解」が重要なのだと。
成熟社会では、「正解」の導き方より「納得解」の導き方が人々の幸福を決めていく。なぜなら、正解が一つの問題なんて、ほとんどなくなってしまうからだ。
この他に、大人の条件としての「納得解」という考え方も紹介されているよ。

その「納得解」を導くチカラが「情報編集力」だと。レゴをやるときに要求される力であり、世界観自体をつくりだす力であると。

小中学生の自殺についても。
マスコミにはきつい意見だが、有識者の間には「自殺報道の後には自殺が増える」という指摘もある。
これって、アッシも以前からずっと思っていたこと。報道による間接的な影響って絶対にあると思うよ。

「夢」と「自由」についても言及。これはセットになっているみたい。技術と経験を蓄積することで、次のステップ(これが大人の「夢」)がイメージされてくる。よく「私には夢がない。」なんていう人がいるけれども、それはまだまだ経験不足だということでいいんじゃないか。「自由」についても同じ。「自由」には「責任」がついて廻るが、これは技術と経験がないと責任なんて持たされないわけだから。

さて、「新しい道徳」とは何か。自分で納得したものが新しい道徳なんだと筆者。大人にならないと、本当の道徳なんて分からないんだよなぁ〜。これが悩ましいなぁ〜。
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posted by りすじぃ at 06:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 10哲学

2008年06月21日

音楽を「考える」

『音楽を「考える」』を読んだよ。音楽を哲学的に考えたり、科学的に考えたり。

茂木健一郎氏と江村哲二氏(故人)の対談集。江村氏は、独学で作曲を学んだとか、しかも学歴は工業大学卒。こうなると、当然科学的に音楽を考えてもおかしくはないよね。

「聴く」という態度についての見解。茂木さんは、名を成した人は皆、「聴く」という態度を持っているという。それに対し、江村氏は、
数学者や物理学者でも、何か新しい発想が生まれるときというのは、人から与えられるものではなく自分のなかに何かをつかむということですね。
という。そう、行動的にも耳を澄ましてみるという行為は減ったような。そして、この「聴く」という行為は、聴衆が自分の音楽を創ろうという行為であるとも。
これに関して、茂木さんは、
聴くことは、決して受身ではなく、自分にぴったりと合ったなにものかを探すという意味を考えると、かなり創造的な行為になりますね。
という見解。そうだよなぁ〜、聴きながらいろんなことを考えて自分なりに解釈しているよなぁ〜、これが低レベルながらアッシの創造的な行為なのかも。

音楽を離れて、表現者の大成について。茂木さんの「野次馬的な根性」について、好奇心が原動力だと江村氏。そして、
可能性という一言では落とし込めないというか、そもそも自分の可能性なんてはじまから考えないですよね。世界が存在するということに対して全身でぶつかっていくというか。
と。人間には限度はないんだよね。

現代音楽の技法についても語る。アッシにはよく分からないけど、「12音技法」とか「無調」とかがあるらしい。これらの起源について、技法有りきではなく、結果であると。
表現として必要なエネルギーがそこにあって、それが出てきた結果なのだと思います。それを、シェーンベルクはああいう形で技法としてまとめあげたわけですが、実際問題、あれを技法として確立したのは彼ではなく弟子たちです。
と江村氏。
まさに「描きたいものを描く」と言った奈良美智と同じだよね。

芸術の根幹は、人間のエネルギーそのものなんだなぁ〜。
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posted by りすじぃ at 11:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 70芸術. 美術

2008年06月16日

現代アートビジネス

『現代アートビジネス』を読んだよ。アートを商売にする難しさ…。

ギャラリスト・小山登美夫氏が現代アートについて、その現状と展望を語る本。そもそも、ギャラリストってどんな職業って感じだけど。

登場人物は、アーティスト、ギャラリスト、コレクターなど。作品を供給する人、仲介する人、買う人という位置付け。特に日本では現代アートを理解する人が少ないから、現代アートにとって、ギャラリストの仕事は重要みたい。
で、まずは小山氏の仕事を中心に、ギャラリストの仕事を紹介。
ただ、一つ言えるのは、僕はその「わけのわからない」ものに夢中になってしまったということです。
そう、この「わけのわからない」が現代美術のこと。そして、筆者は「わからないから面白い」と考える。

続いては、アーティスト。村上隆とか奈良美智とか。村上隆はアニメとかフィギュアとかをモチーフにしているから、オタク?という印象があるかもしれないけど、これを筆者は、
オタクという日本固有の文化風土で生まれて広がりを見せている「欲望の現象」を、徹底的に調査・分析して作品のかたちで表現した、きわめてコンセプチュアルな試みなのです。
と言う。芸術作品に違いないと。
そして、奈良美智。奈良さんの絵はイラストとどう違うのか?という問いに、奈良美智は、「僕は描きたいものしか描かないよ。」と言ったという。この答えは筆者の考え方「自分にとってよい作品を作ること」に繋がる。

アートの価値についても。商品であり、作品であるアート。マーケティングが効かないから、ブランド化も危険であると。ブランドは消費されるものであるから。

最後はコレクターの話題。ちょっとアッシには想像できない世界だけど。金額的に…。同じ芸術でも音楽と違い、残る芸術っていうものはその作品の価値が分かりやすいから、そういう感想になるんだろうけど。

でも、本書を読んで、何となく夢のある話を聞いたような気がするなぁ〜。
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posted by りすじぃ at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 70芸術. 美術

2008年06月15日

大逆転!コンチネンタル航空−奇跡の復活

『大逆転!コンチネンタル航空−奇跡の復活』を読んだよ。自信満々だなぁ〜。

今月末に研修があり、なぜか本書が事前の課題図書。強制的に読まされた割には面白かったよ。

アメリカ・コンチネンタル航空のCEOに就任し、三度目の倒産の危機から会社を救った人物がその経緯を語る。

ポイントは幾つかあるので、思い出せるだけ紹介。

「誰の為のサービスか?」という点。お客さんに乗ってもらってナンボが航空会社。今までの経営者は会社が危なくなってくると、汗を流さず取引で乗り切ろうとしたこと。原点に立ち返ることが必要なんだよね。

「リーダーの仕事は、部下に思う存分仕事をしてもらうこと」だと。逆に言うと、思う存分仕事をしてもらうために、おおよその方向性と明確な方針を伝えたら、部下の仕事の邪魔をしないことだ…とも。これは、部下を信頼することで考える仕事をしてもらうことに繋がってくる。

技術者に陥りがちな点も指摘。技術的にすばらしいことであっても、それをお客さんが望んでいるのか…と。そう、技術オタクにありがちな独りよがりを、「何がいいかを勝手に決めるな」と制する。

そして、担当者間の勝敗は有り得ないこと。会社としては、全員が勝利するか、全員が敗北するかのどちらかだと言う。これは、「力を合わせて」というテーマに基づく。

「あてにできる」という点。信頼されて、あてにされることはどんなにすばらしいことか。あてに出来ないモノは、イライラが募るだけ、余計な仕事も増えるような…。

400頁近い分厚い本。満員電車で立ちながら読むのは辛かったけれども、何とか研修までに読み終えました〜。
大逆転!―コンチネンタル航空 奇跡の復活
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posted by りすじぃ at 07:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 60産業

2008年06月01日

にっぽんの知恵

『にっぽんの知恵』を読んだよ。日本人は日本人論とか日本論が好きだと思う。

筆者が、各テーマにそって、その分野で明るい人物を集め、共同討議という名の対談を行う。それをまとめたもの。

テーマはさまざま。勿論、日本人の特徴をよく表すものが選ばれているよ。

「花見」では、群桜、群衆、飲食の三要素があると。ところが、それは日本人だけの感覚。英語のcherryはサクランボ。つまり食べるのが目的になっている。桜の花を表すには、cherry blossomと言わなければならない。ここには欧米人と日本人の気持ちの持ちようの違いが映し出されているのではないかと。

「サル学」では、ダーウィンの進化論の捉え方について。「サルと人間の祖先は共通だった」という話に対し、日本人は「そうだと思っていた」と面白がるが、アメリカでは「そんなこと、聖書には書いていない」と猛反発があったとか。

「ありあわせ」では、百姓という言葉の意味について。これは、その時どきに、さまざまな稼ぎ仕事をする人々といった意味の「百の姓」だと。これは、近代日本の高度成長を支えた、いわゆるゼネラリストの祖先としての意味を持っていたのではないかと。

「缶コーヒー」では、“一息入れる”には二つの意味があると。「他の誰かと一息入れる」と「独りで一息入れる」だ。これは大きな違いだよね。

と、まだまだテーマは続くんだけど、本書の底流には、矛盾を自然に肯定する日本人という考え方が流れているように思う。本書的に表現すれば、論理的に矛盾があっても「ちょうど好い加減」が最適なんだという考え方。これは、憲法第9条に表現されているとも云う。そう、これが「にっぽんの知恵」の真骨頂だと。

いい悪いは別にして、そういう意味では「にっぽんの知恵」が通用しない時代になっているような気がするなぁ〜。
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posted by りすじぃ at 07:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 30社会科学