2008年07月26日

日本人の精神と資本主義の倫理

『日本人の精神と資本主義の倫理』を読んだよ。茂木さんはトレンディドラマがお嫌いとか…。

いつもの茂木先生と経営コンサルタントの波頭亮氏の対談集。テーマは「日本人の精神」と書いてあるけれども、「現代日本人の生き方」に近いような。

まずは二人のプロフェッショナル論から。波頭氏のプロフェッショナルの定義は「公益性」。使命感をもって、自分の知識や技術を使って仕事をするがプロフェショナルであると。これは、ヒポクラテス(プロフェッショナルの元祖と呼ばれていたとか)の時からの定義でもあるとも。この考え方が、日本人は寄付をしないという話に、さらに二人の結論として「大衆というバケモノ」が野に放たれたという議論に展開していく。それが、こういう表現になって現れてくるよ。
僕はそうした事象と金持ちが寄付をしないこととの間には共通項があるとみています。ノーブレス・オブリージュ、高貴なるがゆえの義務を知るためには、精神的な価値が理解できなければならない。ところが、サンダル突っかけているオバサンも、100億円稼いだ資産家も、その精神性において違いなどまるでないのが今の日本なのです。
うわぁ〜、茂木さん、衝撃的なご発言…。
でも、この発言は大事かも。大衆の大衆性への迎合は、分かりやすさを優先するだけで、ハイカルチャーを生み出せない国を作ってしまうのだとも言っているよ。

続いて、日本人の個性について。日本人は総じて無個性であると。それは何事にも突き詰めて考えていないからだと。そして、個性のレベルが低過ぎて、まったく個性になっていないということ。
ここで登場するのが家康。秀吉は刀狩りをしたけれども、家康は心の刀狩りをしたと。
出る杭を打つ社会の仕組みを完成させ、突出した個性を徹底的に叩き潰すような国民性を作り上げてしまった。
と、波頭氏。茂木さんは「ピア・プレッシャー」という言葉を使って、同じようなことを言っているよ。

学習についても。
合目的的でない方向への変化についても学習であると茂木さん。逆にいうと変化=学習なわけ。学習は価値依存的な概念ではないともいう。これがカッコイイと波頭氏。

経済至上主義についても警鐘を鳴らす二人。若い人にどんな仕事がしたいか?と聞くと「20代で年収1000万以上の仕事」と答えるという。これは多くの収入を得ること自体が目的化していると。仕事ってそういうものじゃないでしょうという二人にアッシも同感。
資本の論理、すなわち、より多くの利潤を追求するために、われわれは限界を超えて、必要以上の利便と消費を強制的に享受させられているのではないか。
と、波頭氏の言葉。

こんな具合に面白い話が次から次へと出てくるよ。
で、最後の茂木さんの一言が傑作。
何だか燃えてきたなあ(笑)
何となく分かるよね。話が盛り上がって、じゃぁ自分はこうしてみようと思った時のワクワク感がこの言葉に表れているような気がして、嬉しいね。
日本人の精神と資本主義の倫理 (幻冬舎新書 は 3-1)
日本人の精神と資本主義の倫理 (幻冬舎新書 は 3-1)波頭 亮

幻冬舎 2007-09
売り上げランキング : 170250

おすすめ平均 star
starレトロな日本人論ぽい
starまたもや米英に屈服する知識人
starお値段以上、とまではいかないが・・・

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by りすじぃ at 16:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 30社会科学

2008年07月24日

早稲田はいかに人を育てるか

『早稲田はいかに人を育てるか』を読んだよ。大学人が自大学について語ると…。

早稲田大学総長・白井克彦氏が、早稲田大学の教養課程改革について説明しているよ。
冒頭、いきなり早大生は勉強するようになったという話から。それは、勉強するようになるための「しかけ」を早稲田が仕込んだからだと。

ひとつは学内のオープン化推進。学部の垣根を越えた科目の設置、さらには協定を締結している他大学の科目の履修など。かなりの人気を集めているとか。
もうひとつは「テーマカレッジ」の創設。これもオープン化の一つで主に1、2年生を中心とした少人数教育科目。テーマも多彩。低学年からのゼミで、「正解の無い問い」と向き合うことや「大学で勉強するとはどういうことか」といったことを学ぶという。
その他に、「チュートリアル・イングリッシュ」などの徹底的な語学スキル習得の為の教育などを進めたようだよ。

「教養」についての筆者の考え方。個人的な要素が強いという。教養と獲得するために…という話題でこう言う。
そこでキーになるのは、対象に向けての「楽しい」だとか「好き」だとかいった感覚だろう。それがないと、集中力も持続力も維持できず、深度を探求できない。
これって、どこかで聞いた言葉だなぁ〜。梅田望夫氏や茂木健一郎氏も言っているような…。

早稲田の改革は「学生本位」であると筆者。ここで何故か大学紛争の時代との比較の話が出るんだけれども、比較してもしょうがないような…。
最後に引用。
重要なのは、学生に求める「ものの見方や感じ方」のレベルをできるだけ高いところに設定し、なるべく早い時期に「考える刺激」を与えることだ。
と。これも、茂木健一郎氏的に言えば、脳の活性化なんだろうね。

さて、全体的には早稲田の自慢のような。こういう時代だから、自大学のことを新書で出せば、十分な宣伝になるわけだし。
まっ、業界的には参考になりました〜っていうことで。
早稲田はいかに人を育てるか 「5万人の個性」に火をつけろ (PHP新書 442)
早稲田はいかに人を育てるか 「5万人の個性」に火をつけろ (PHP新書 442)白井 克彦

PHP研究所 2007-01-16
売り上げランキング : 265178

おすすめ平均 star
star全く読む価値はない
starなんだこれは……
star日本の大学改革のひとつの例

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by りすじぃ at 00:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 30社会科学

2008年07月22日

私塾のすすめ

『私塾のすすめ』を読んだよ。学ぶことの可能性は無限大だぁ〜。

齋藤孝氏と梅田望夫氏の対談集。タイトルに「塾」があるように、ふたりが教育論を語るっていう感じ。

梅田氏は得意のロールモデルについて。すごく偉い人において、それを口に出して言えばいいと。日本人は小学生で偉人伝を読んで、それで終わりだから。

齋藤氏は「あこがれ」論を展開。教育は「あこがれにあこがれる」という構造だとか。そして、このふたりの思考は、ロールモデル思考=あこがれる力という結論に帰着するよ。

そして、齋藤氏の手法がすごい。
僕は結構、「無理やり」というのが好きなのです。
講演会などで、まったく話を聞く気のない人を立たせて体操させたりするとか。梅田氏が言うようにこれはすごい情熱。

モチベーションのない人に対してどうするかについても、面白いよ。
「習熟」という言葉を使っているけれども、要は成功体験。微分積分を中学生に教えて、多少でも理解できると自信が生まれる。そうすると、そこに辿り着く前の真ん中の部分が落ち着いてできて、自信が持てると。そう、展望が開ければ、何事にも落ち着いて対処できるんだよね。

「ノー」と言われたくない日本人の話も面白いよ。日本人は「ノー」と言われることに対して弱すぎると。うまくいかないことが普通なのに、先回りをして引いてしまう。提案と自分の全人格はまったく別のものということ。気が付かないと言うより、染み着いてしまったのか…。

さて、本書のキーワード「私塾」。ふたりの教育論を実践する場として、ネット上に展開される「私塾」を想定しているわけ。想定しているだけでなく、適切な場だとも。梅田氏の持論を齋藤氏も肯定するのが意外な感じ。ふたりとも1960年生れだから?アッシもほぼ同年代。今後は齋藤氏も要チェックです〜。
私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書 (723))
私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書 (723))齋藤孝 梅田望夫

筑摩書房 2008-05-08
売り上げランキング : 2506

おすすめ平均 star
starポジティブおじさん×2
star文化資本者の梅田さんを理解する
star似た者同士? 似た者同志!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by りすじぃ at 19:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 30社会科学

2008年07月13日

幸せになる力

『幸せになる力』を読んだよ。大人にも読ませたい…。

清水センセーが、主に小学6年生から中学生に向けて、幸せを掴む方法を語り掛ける。今までの清水センセーの著作にはない系統の本だよ。

子供がよく親から言われる言葉「勉強しなさい」はどういうことなのか?勉強すれば、幸せになれるのか?
この命題に対して、この言葉は「応援メッセージ」であると説明する。勉強することは、幸せになるためのひとつの手段であるとも。

勝ち組負け組といった考え方を止めようとも。絶対的な勝ち組なんていないし、なれる訳がない。そんなことに振り回されるのは時間の無駄。世の中は不平等なものだと。

そして、人間の価値について。どんな人にも、その人には、その人だという値打ちがあるのだという。
きみが、今きみとして生きているってことは、ほかのどんな物でも代わりのできない、ものすごく価値のあることなんだ。
と。

最後に、五つの幸せになるために持っていたい力をまとめているよ。その内容は本書を読んでもらった方がいいかも。

最近の子供達は、周りに情報が有りすぎて、それにどっぷり浸かってしまい、そこから取捨選択したり、自分なりに考えることを止めてしまっているのかもしれないね。
つまらない雑音に振り回されることなく、幸せになるための力を身につけること…40を過ぎたアッシのようなオジサンでも実践したい考え方だなぁ〜。
幸せになる力 (ちくまプリマー新書 78)
幸せになる力 (ちくまプリマー新書 78)清水 義範

筑摩書房 2008-02
売り上げランキング : 139737

おすすめ平均 star
star子どもにもそして親にも読んで欲しい本
star著者の祈りに心打たれるのです

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by りすじぃ at 06:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 90文学

2008年07月07日

生物学個人授業

『生物学個人授業』を読んだよ。疑問にも思わなかったことが新たな疑問に…。

発生生物学の岡田節人先生の講義をイラストレータの南伸坊氏が聞く。それを南氏なりの解釈でまとめる。で、先生の一言アドバイスで締める。その他に補講付き。

先生の講義は、三つの大事な言葉を覚えることから。細胞、DNA、細胞核。そして、もう一つ大事なこと。それは「生命は絶えたことがない!」と。細胞には2種類あって、それは体細胞と生殖細胞。体細胞は一代限り。でも、生殖細胞はいつまでも絶えることがないと云う。だから、遺伝子治療とは、生殖細胞に影響がないように、体細胞だけに操作を施すことなんだと。

細胞の話をきっかけに死の話、ガンの話と続く。イモリはガンでは死なないらしいよ。ガンには掛かるけれども自分で治してしまっていると。
生物学的にいうとガンは大したことない。というのは、だから気にするなということではないんですね、ガンというものを、人間の側からだけではないアングルから見てみる、というところに意味がある、と私は思います。
と岡田先生。そして、この考え方がガン治療に応用されているようだよ。

突然だけど、オタマジャクシはカエルの子だよね。これは生物学的には「分化」というよ。この分化を「仮の姿」だと岡田先生。卵の時と本質的に変わっていないから。

で、その卵の時と何が変わっていないのか。それはDNA。細胞はDNAを複写しているだけなのに、どうして分化が起こるのか。そして、卵1個から、どうして脳の細胞や胃の細胞が出来るのか?あまりにも不思議。
これは、DNAが命令だけ持っていることに由来するからだと。そして、すべての細胞は、無駄だと分かっているのに、自分が係わる以外のDNAを持ち続けている。仕組み的には、単なる複写なんだから、そうだよね。これを、岡田先生は「宝の持ち腐れ作戦」と名付ける。トカゲの尻尾が再生するのも、この「宝の持ち腐れ作戦」によるものだね。

あ〜、生物とはなんとも不思議なものなんだろ。前回紹介の『解剖男』も然り。人類の探究心がいつまでも続くのはこの不思議さ故なんだろうね。
生物学個人授業 (新潮文庫)
生物学個人授業 (新潮文庫)岡田 節人

新潮社 2000-07
売り上げランキング : 106745

おすすめ平均 star
star岡田先生の人柄が最高です!
starポンポンとオモロい発生学の話題が飛び出してくる本
star南さんの質問が分かりやすいです。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by りすじぃ at 19:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 40自然科学

2008年07月05日

解剖男

『解剖男』を読んだよ。熱い語り口が魅力?

動物の遺体を観察することで、動物の進化の過程を科学的に解明しようとする「遺体科学」を提唱する筆者。さらに遺体を文化としても扱おうという。そして、現場主義、現物主義を貫く姿勢。なかなかユニークな人物のような。

実際の解剖を始める前に、まずは遺体の運命について語る。例えば、渋谷の忠犬「ハチ公」。剥製は国立科学博物館に保存されているとか。そして、解剖の記録が在り、そこからハチ公の死因を分析する。フィラリアなのか、それとも焼き鳥の串なのか…。
その他に、キリンの「タカオ」、ライオンとヒョウの合いの子レオポンの「チェリー」など。当時の日本人の動物観をこれらの遺体が物語る。
そして、もっと地味なコウモリやネズミの遺体。どの遺体も科学や生物学や解剖学の、まったく新しい真実をつかみ出して生きているという。

解剖に取り掛かる。硬い遺体と称して、「骨」の話から。ここでは、系統と適応という考え方を学ぶよ。
キリンがシカやウシの仲間に近いとは系統の話。これは今ではDNAが正確に語ってくれる。ところが、
適応、すなわちライフスタイルに合わせた動物の形を調べようとすれば、骨こそがずば抜けて第一に重要な情報源になるだろう。<中略>今後生物学が遺伝子の内実をいくら解消したとしても、でき上がった形の機能を知ろうとする好奇心に対して、遺伝子の研究が応えてくれることはけっしてない。
と云う。骨は普段は寡黙だが、人間の好奇心に対しては素直に語ってくれるのかもしれないね。

具体的な骨の代表として頭骨に関する考察。どんな頭骨とは何かという結論はすごく単純なこと。それはモノを食べることと脳を守ることが基本設計であると。確かに、そう言われてみれば、もうホントにそうとしか言えないよね。

骨の話ももう少し。シカの足の骨。骨だけを取り出してよ〜く観察してみると、シカは指先だけで立っている。そして、人間でいう踵はすでに地面からは離れて高い位置にある。これはビックリ。そういう構造になっていたんだ〜。これは早く走るための適応なんだよね。

もうひとつ。軟らかい遺体は内臓。代表的な事例はウシの反芻胃。完全に草を食べるためにデザインされたもの。筆者は、反芻獣を「究極の草食獣」と表現するよ。

現代社会は遺体に無関心であると筆者。これを見直すために「遺体科学」と提唱するという。どうして現代人は遺体に無関心になったのだろう。養老先生の『死の壁』にそのヒントがあったような気がするなぁ〜。
解剖男 (講談社現代新書)
解剖男 (講談社現代新書)遠藤 秀紀

講談社 2006-02
売り上げランキング : 54104

おすすめ平均 star
star動物の解剖について。
star新書版「遺体科学宣言」
star現物とガップリ四つに組む科学者

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by りすじぃ at 10:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 40自然科学