2008年08月26日

暗号解読

『暗号解読』を読んだよ。人間の考えることってスゴイ…。

同じ作者(サイモン・シン)の『フェルマーの最終定理』がすごく面白かったので、夏休み期間中のこの時期に本書に挑戦。文庫本2冊で722頁もの長編ドキュメント。
でも、期待通りの面白さ。数々の暗号解読の手法を懇切丁寧に説明しているし、それ以上にそれらの暗号に関わる人々にまつわる話が面白い。とにかく長いけど、まったく飽きさせず、一気に読破した感じ。

出だしは、スコットランド女王・メアリーの暗号を話題に取り上げ、暗号の基礎的な手法を紹介しているよ。単純な転置式暗号と換字式暗号を取り上げ、カサエル・シフトや単アルファベット換字式暗号などを実録を伴いながら説明する。そして、その解読手法も。解読なんて考えてもみなかったけど、よ〜く考えてみると解法が見つかるのだから、すごいよ。
で、冒頭のスコットランド女王は、暗号が解読されてしまった為に斬首されてしまったのだけれどもね。

解読可能な暗号は使われなくなる。そこで登場したのが、ヴィジュネル暗号などの多アルファベット換字式暗号。これはかなりの強力な暗号で“解読不能の暗号”とまで呼ばれたとか。
…ところが、人間の知恵はすごい。登場するのは、コンピュータの雛形を作ったを言われるバベッジ。天才だ…。

そして、人々の間に暗号が浸透する。エピソードとして語られるのが“ビール暗号”という実話。さらに、軍用目的での利用にまで発展するわけ。ドイツの暗号機・エニグマの誕生だ。
このエニグマも凄いよ。よくぞ、ここまで考えたと思うくらい、創意工夫の集大成。
…ところが。
結局、エニグマも解読されてしまう。
さらには、チューリングによってエニグマ暗号の解読機械まで作られてしまう。
ふ〜、どうなっているんだ。人間の欲望とか向上心とか、底知れないものがあるのを感じずにはいられない…。

途中で、ロゼッタストーンなどに代表される古代文字の解読などの話題が混じる。ここでも解読の手法が、いままでの暗号解読の手法が使われているのが面白い。

終盤は、電子通信の発達に伴った新たな問題としての、鍵交換システムの問題を取り上げているよ。RSAやPGPなど。
ここで活躍するのが数論などを駆使した数学。モジュラー演算などは、『フェルマーの最終定理』にも登場していたよね。一方向関数では素数の乗算がその鍵となっているし。

いや〜、これは本当に面白い。読ませる筆者の筆力も凄い。翻訳もよいと思う。『フェルマーの最終定理』も面白かったけれども、どちらも人間を描いているドキュメント。
この夏休みの最高の一冊に出会えました〜。
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2008年08月19日

ダ・ヴィンチ・コード

『ダ・ヴィンチ・コード』を読んだよ。久しぶりのミステリー。

遅ればせながら…という感じだけど、お盆休みは気楽に読める長編小説を…と思い、この『ダ・ヴィンチ・コード』。

ストーリーはあまりにも有名なので省略するけれども、この小説の面白さは、ストーリー展開の中に散りばめられた薀蓄(特にキリスト教に関する)にあるような気がするよ。
薀蓄といっても、それはあくまでも真実ということではなく、ひとつの説にすぎないのだけれども。

例えば、「最後の晩餐」に描かれているイエス・キリスト以外の人物について。そして、それらの人物とイエス・キリストの立ち位置の関係から、深〜い意味を読み出していくよ。そうまで、深読みしなくてもいいのでは?って思いもあるんだけど。

そして、キリスト教に関する様々な言い伝え。「マグダラのマリア」の話は、アッシ的には初耳で興味深いよ。こういう話も歴史的な経緯があったり、キリスト教から派生した宗派との対立があったりした中で生まれてきたものなんだろうね。

本書の興味のもう一つは、「暗号」。冒頭では、フィボナッチ数列とか黄金比とかの話が出てくるので数学的なのかと期待したけど、それは無し。ちょっとした話題って感じ。それよりは、暗号を残したルーブル美術館の館長の趣味的な暗号といった方がいいかも。結局、自分の孫へのメッセージな訳だから。

中世ヨーロッパの人々の考え方もよく分かった感じ。阿部謹也先生の本で多少勉強していた成果がこんなところで活かせるとは…。

さて、最後に。小説とは関係ないんだけど、「モナ・リザ」の服装。これまた、最近若い女性が着ている流行の服に似ているような気がするんだけど…。

あ〜、なんだか小説とは関係ない話ばかりになってしまったかぁ〜?
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2008年08月14日

傷つきやすくなった世界で

『傷つきやすくなった世界で』を読んだよ。石田衣良氏は初めて。

駅に置いてあるフリーペーパー「R25」に連載されていたエッセイをまとめたもの。去年だったかたまたま録画したTV番組。何の脈絡もないキーワードを3つほど与えられて、それに基づいて、氏が小説を書くというもの。アッシと同じ年代なのに、若く見えるしオシャレ。アイデアが浮かぶとササッと小説を書き上げる。そんな番組だったかなぁ〜。
それ以来、石田氏の本は気になってはいたけれども、その作品は『池袋ウエストゲートパーク』など、ちょっとオジサン向けではない感じで手が伸びず。

で、本書。エッセイなので手軽に読めるよ。対象がR25だけあって、20代後半男子向け。ただ、女性の読者もかなり意識しているよね。
まさに、現代の若者を生き方を中心に話を進めているけれども、現代ニッポンのあり方そのもののような気もしてくる。同年代のオジサンでも、共感する部分があったから。

例えば、選挙の話。「自分も参加できるエンターテーメントだ」なんて言っているし。若い頃は選挙なんて興味が無かったけれども、この歳になると、何となく気になる。それは、アッシの中でエンターテーメントとして、意識されているからなのかも。若者にもそういう意識でよいから選挙に参加してもらってもよいのだろうね。

あと、日本人の感覚的な問題。
一年が終われば昔のことは水に流すという日本人の時間感覚は素晴らしいね。
と。これには目からうろこ。そうだよなぁ〜。そうやって毎年正月を迎えているんだよなぁ〜。

いじめの問題についても。日本人の恐るべき同質性が、その構成員に同調圧力をかけると言っているよ。これはまさに茂木さんのいう「ピアプレッシャー」だね。誰もが気が付いているということ。同調圧力に付き合いながらも、「全力で自分を守れ」と石田氏。

さて、読み物としては読みやすいし、共感する部分もある。それでも、何だか氏の別の作品を読もうという気にならなかったのは何故だろう。泥臭さというか生身の人間性が伝わってこないような。女性には受けるのかもしれないけど。
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2008年08月13日

脳を活かす勉強法

『脳を活かす勉強法』を読んだよ。茂木さんがいつも言っていることをまとめると。

脳科学者の立場から学習とは何か、勉強はどうするとよいかを考えるよ。とは言っても、要はドーパミンをいかに大量に効率よく出すか…といういつも茂木さん理論に行き着くよ。

そして、脳を喜ばせる手法の数々を紹介する。

ひとつは「没我」。この「没我」の境地に達していないと、向上することはない…と。これは自分と仕事を一体化すること。それでも本人はシンプルに仕事を楽しんでいる状態…であると。
そう、仕事でも勉強でも、集中するとあっと言う間に時間が経つけど、終わってみるとかなりの成果を上げていたりするよね。

勉強法については、『鶴の恩返し』勉強法。これは以前にNHKの番組「プロフェッショナル仕事の流儀」の茂木健一郎特集で紹介していたもの。まさに全身を使って覚える手法だよ。

記憶についての考察も。「歴史を忘れる者は、それを繰り返す羽目になる」という格言を紹介し、
歴史を知ること、過去を知ることで未来を予測することができます。逆にいうと、過去のことを知らないと、未来のことを予測し、想像することができません。
と、過去を忘れず、そこから学び続けることが脳を喜ばせるよい刺激になると説く。

「気づき」の重要性も。人生を変えるような学びの機会は、突如訪れたように思う…と。ふとしたきっかけが「気づき」の機会になることがあるよね。これを「一回性」というらしいんだけど、
脳には、いつ、どこで訪れるか分からない一回性の体験を、大切に刻印し整理していく働きが備わっています。この機能こそが僕たちの人生を豊かにつくっています。
…と。そう、一度気が付くとそれがあっという間に身に付いてしまうっていうことがあるよね。実際、アッシにもそういう経験があるし。脳科学的にはミラーニューロンの話に繋がるわけ。

「遇有性」も脳を喜ばす。contingencyはsecure(予想できること)とchallenging(新しいこと)が、うまく混ざっている状態。まさに、この不確実さが脳を喜ばすというわけ。
ここまでは、すでに茂木さんが言っていた言葉でアッシも知っているもの。最後に、新しい言葉が出てくるよ。それが「知のオープンエンド」。
学習はどんなに学んでも必ず次があって、青天井。限界がない…ということ。これを脳科学では「オープンエンド」と云うと。
僕は、学習の本質とは、この「知のオープンエンド性の楽しさを知ることだ」と考えています。
と、茂木さん。
そう、夢中になる楽しさは脳を喜ばすよね。
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star著者の知名度ほどの内容はないかも
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2008年08月11日

電車の運転

『電車の運転』を読んだよ。簡単そうに見えるけど…。

2000年にJRを退職するまで、42年間運転士を務めた宇田賢吉氏が筆者。本書は電車の運転に関するありとあらゆる情報を盛り込んだ本。電車っていうくらいだから、電気の知識も盛り込まれているよ。

まずは鉄道の特徴から。
19世紀に鉄道が誕生し普及し、20世紀に自動車が誕生。これが逆だったら、両者の長所を生かせたのに…と筆者。
自動車のない時代に全国にローカル線を建設したけど、結局はその後自動車の普及によって廃線に追い込まれている。確かに誕生が逆ならば、無駄なく住み分けが出来たかもね。

さて、いよいよ電車を発信させる。電車には変速機がないから、モータの制御が必要だったり、直流・交流などの電気的な話が続く。
そして、マスコン。ノッチ操作の意味は、自動車のアクセルとは違う。どこまで加速するかを指示するものだと。よく考えてみれば、そうだ。変速機がないんだから、加速は一定なはず。なるほど。

一定速度まで加速すると、後は惰行。走行中の注意は制限速度。これもかなり厳しい制限があるよう。特に曲線とか勾配とか分岐器とか。
この他にも、変電所の容量制限の為に、2列車が同時に全力運転するのを制限するとか。

駅に近づくとブレーキ。電車の運転は加速や惰行はマスコンを一定にするだけの操作だけど、ブレーキは運転士の腕の見せ所。舟漕ぎブレーキを避けたり、停止位置にピタリと止めたり、滑走をしないようにしたり。

線路と架線のことも。架線は直流、交流によって、設備が違うし。その他、枕木、レール、ホームetc。

閉塞の考え方に出てきた言葉が面白いよ。
閉塞区間にいる列車の運転士は他の列車との遭遇を考える必要がなく、極論をいえば、前方注視の必要がない。現実に曲線のトンネルでは見通しはゼロに等しく、運転士には前方の様子がまったくわからない。前方注視は閉塞を保障する信号機の確認のほか踏切などでの不測の事態に備えることと、停車や発車の操作を行うためである。
これは、道路交通では考えられないよね。それだけ、閉塞という考え方を徹底しているんだろうね。
前部標識(前灯)についても、考え方は同じ。
前灯は列車の前頭を示す標識であり、運転士が前方を見るための証明ではない。
と。徹底している…。

ここまで知ると、電車の運転は自動車とは全く違うことが分かるよね。操作の問題ではなく、システム問題。大量、高速輸送の担い手としての使命は厳しいってことなんだね。

電車に乗ったら、気になることが増えそうです〜。
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電車の運転―運転士が語る鉄道のしくみ (中公新書 1948)宇田 賢吉

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star鉄ちゃんでなくても読んで損がない。
starマニアックで難しい点もある
starプロの運転士の世界への案内図

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2008年08月10日

ほんとうの環境問題

『ほんとうの環境問題』を読んだよ。アメリカと中国に不信感…。

冒頭、いきなりアメリカと中国だけど、やっぱり環境問題って、政治的な駆け引きに利用されているだけ。地球のことなんか誰も考えていなんじゃないかと思えるくらい。違うか、地球のことより人類、ホモサピエンスのこと、いや、その前に自国の国益のことしか考えていないんだよね。

さて、本書。『環境問題のウソ』の筆者・池田清彦氏とお馴染み養老先生がそれぞれ執筆。最後は二人の対談で締めくくる。

養老先生は冒頭で曰く。「アメリカ文明とは石油文明である」と。アメリカの秩序は石油によって維持したのだとまで云う。それはまさにエントロピーをそこに捨てるかという問題で、それが炭酸ガスの問題になったのだと。

そして、結局はこういう結論。
環境問題は安全保障問題そのものです。憲法九条や核武装の問題とも、すべてリンクしていると僕は思いますよ。
例として、原発全廃を目指していたドイツやイギリスが方向転換したことを上げているよ。

さて、池田氏。

環境問題にはある種の「流行」のようなものがあると。アッシもそう思う。日本人の流行好きに乗っているだけのような…。そう、あと20年もしたら、CO2って何?っていう世の中になっているのかも。なんともバカバカしい…。

CO2が増えることでメリットは無いかのも考える。CO2が増えて気温が高ければ、光合成の速度は速くなり、植物の成長が速くなるってこと。これって生物にとっていいことじゃないの?それで、恐竜とかが生き延びていた時代も地球にはあったわけだし。
そんなことを考えると、環境問題ってますますホモサピエンスの都合か?とも思えてくるよね。

一転して、石油が人類を救った話。石炭より前は木材しか燃料が無かったわけで、石炭・石油がエネルギー資源として発見されなければ、今頃世界中の木が切られて、砂漠化していたかも…という話。なるほど…。
でも、逆に木材エネルギーのままだったら、これだけ文明は発展しなかっただろうし、エネルギーの消費もそれほどでもなかったのではとも思えるけど。

エネルギー問題は人口問題とも関わってくる。エネルギーを減らすには人口を減らすのが一番。なるほど…。そして、人口抑止対策としての「携帯電話」の普及を上げているよ。これはユニークなアイデア。
携帯電話のみならず、パーソナルなツールによって、それを使う人たちの「個人の世界」を広がれば、出生率は下がる。
先進国は概ねそうだと池田氏。

そして、京都議定書によるCO2の6%削減。年間1兆円も掛かるという。日本のエコ化は元々進んでいたのにさらに削減を要求されていると。ここでアメリカはどうなのか?ガソリン撒き散らしカーを売り続けている国が日本のように対策を講じれば、一気にCO2は削減できると。
さらに、CO2の削減問題より、人口とかエネルギーの問題に取り組むことが本質論なのに、何故か流行のエコに取り組んでしまう愚かさ…。
やっぱりアホだと言うしかない。
と池田氏。ごもっとも。

最後に二人の対談での養老先生のお言葉を引用。
文科系の人間というのは、どうしても最後にはイデオロギー優先になって事を考えてしまうよね。そういう文科系の人間が指導的な立場にあることが多い。なんとかしてほしいよな。モノは精神で置換できず、精神はモノで置換できない、ということがわかっているのかな。
いやはや、環境問題って、奥が深いのに、どうして注目されていないのか理解できたような…。
ほんとうの環境問題
ほんとうの環境問題池田 清彦

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star結論は出来るだけ何もしないこと
starどっちを信用したら良いのか
star疑うということ

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2008年08月04日

イカの哲学

『イカの哲学』を読んだよ。ユニークなタイトルに惹かれたけど。

カミカゼ特攻隊員だった波多野一郎氏が書いた『イカの哲学』を中沢新一氏が現代的な解釈で蘇らせる。

前半は波多野一郎氏の紹介とその著書『イカの哲学』を収録。
早稲田大学在学中に学徒兵として航空隊を志願する。航空隊を志願した理由が
武士道精神の「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の立場に立つとき、むしろ危険な航空隊こそがもっとも安全と考えられるというのでした。
というユニークな思考。

特攻隊員として、明日出撃というその前日にソ連軍が満州に侵攻、そこで出撃は中止になり、終戦。ソ連軍の捕虜となりシベリアでの過酷な労働。4年後に帰国するが、ソ連を見たから今度はアメリカということでスタンフォード大学に留学する。その結論は、
アメリカ文明の基礎も、共産主義として表現されたソ連の人間中心主義と、少しもちがっていないではないか、<後略>
というもの。
そして、留学中の夏休みにモントレーの漁港で、イカの箱詰めのアルバイトをしている中で、思考の閃光が走ったという。この閃光を表現したのが、波多野一郎氏の『イカの哲学』。

波多野氏の『イカの哲学』の内容は、まさに自分の経験を語ったもの。大助という主人公の経験談風ではあるけれども、波多野氏の思考を集大成したものなんだと思う。文章は荒削り。でも、何故かその素朴さに説得力がある文章だよ。

そして、大助君は何を思ったか。それは、
大切なことは実存を知り、且つ、感じることだ。たとえ、それが一疋のイカのごとくつまらぬ存在であろうとも、その小さな生あるものの実存を感知するということが大事なことなのだ。この事を発展させると、遠い距離にある異国に住む人の実在を知覚するという道に達するに違いないのだ。
と。本書のポイントをここですべて述べているような。だから、後半の中沢氏の解釈は、ここさえ理解すれば十分って感じ。

で、中沢氏は、『イカの哲学』を戦争と平和という観点からの解釈を行っているよ。

まず、思想家バタイユの考えを引用し、生命には「平常態」「エロティシズム態」の二つのモードが共存しているという。そして、「平常態」には平和しかないが、「エロティシズム態」には平和と戦争がある。エロティシズム態の平和は根源的な理由で、戦争を拒否すると。そして、平常態の平和には愛がないと。
エロティシズム態の平和は、戦争が発生する心の構造の噴火口に飛び込んで、戦争へ向かおうとする生命の衝動を、愛や慈悲につくりかえてしまおうとしてきた。
ということらしいよ。波多野氏の『イカの哲学』は、このエロティシズム態の平和にたどり着いたのだとも。

さて、波多野氏の『イカの哲学』で大助君が語る「実在」とは…。イカを食料としての有機物として見るということより、「心」をもった存在として見ることが実在の意味。そして、核兵器によって、今までの戦争のレベルを超えて、超戦争を体験した日本。超戦争では、敵の実存はいっさい消去されるという。敵となった兵士たちばかりでなく、非戦闘員の市民たちの実存も消去されると。
『イカの哲学』の考えることによれば、核戦争によって現実のものとなってしまった超戦争は、実存の無視という点では、出来事の構造から言えば、人間がイカたちにたいして平気でおこなっている行為とまったくパラレルである。
ここで、アッシはすっかり納得。

最後は何故かエコロジーまで辿り着くんだけれども、これはちょっと飛躍し過ぎのような…。

冒頭でタイトルのことを書いたけど、この時期、戦争モノの話題が出る季節。そういう意味ではタイムリーな本でした〜。
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star他の生物に”配慮”ができるのが人類
star波多野一郎の生涯に、限りない重さを感じる。
star中沢平和論のはじめの一歩

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2008年08月03日

世界一やさしい問題解決の授業

『世界一やさしい問題解決の授業』を読んだよ。まさにシステム化の為の思考方法。

経営コンサルタント会社・マッキンゼーでの手法を平易に解説した本。それでも、このような手法は、システム開発経験者なら、なんとなくやっている自然な手法だと思うよ。多少、亜流があったり、省略しても問題ないステップがあったりするんだろうけど。

まずは「まえがき」から。
どんなに複雑な問題も、いくつかの小さな問題に分解すれば、問題は解決すると書かれているよ。ここが、この手法のポイントなんだろうね。そう、高校の時の数学の問題を解く手法もそうだったから。小さな問題が解決したら、それをひとまとめにしておいて、大きな問題を小さくしてしまう感じかな。
さらに、
問題解決の応力を身につけるということは、<中略>自分の力で考え抜き、行動をする人になる、自分の力で人生を切り開く人になるということなのです。
も、もう一つのポイント。

本文は3章構成。
最初は、「問題解決キッズ」なるものを登場させ、問題解決の流れを説明。ここで分解の考え方を登場させているよ。その後、その分解を使った問題解決手法を2例ほど。

詳しい内容は本書を読んでいただくとして、前述したように、問題解決の手法は分解してしまえば、意外に平易。この本ならば、中学生から理解できるという。

ただ、手法と理解力は違うと思う。
Amazonの商品の説明欄に「世の中を生き抜くホンモノの思考力が身につきます! 」と書いてあるけど、これはちょっと違うような…。思考方法は身に付くかもしれないけど、理解力までは身に付かないのでは?
だから、考える力が必要なんだよね。そして、その為の訓練が小学校から行われていないといけないんだよね。
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世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく渡辺 健介

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star中学生、否、小学生を対象とした問題解決の本
star作者の、子供に対する愛が伝わる本。

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2008年08月02日

新しい太陽系

『新しい太陽系』を読んだよ。太陽系はドンドン新しくなる〜。

筆者は、太陽系小天体の観測研究が専門、国立天文台の情報センター長。ここまで書くと普通の天文学者って感じだけど、冥王星が惑星か否かの定義を確定した国際天文学連合「惑星定義委員会」の委員っていうと一味違うよね。

本書は太陽系を構成するさまざまな天体を取り上げて、その全体像を説明、そして、冥王星が惑星というカテゴリから外れた理由を説明しているよ。当時の新聞では降格といった印象が強かったけど、結局、太陽系のことを知らなければ、その本当の理由は理解できないわけだからね。

そんなわけでプロローグでは、太陽系を観測するツールの技術発展について述べているよ。天体望遠鏡の発明に始まり、星図の整備や天体力学の発展、写真技術の革新、そしてCCD素子の発明など。これらは新しい太陽系の解明に貢献しているってわけ。

この後は、太陽系の要素についてそれぞれを解説。

まずは太陽。
太陽の中心部の核融合反応で生まれたエネルギーは光になって放射として外に向かって行くのだけれども、太陽の中心部は押しくらまんじゅう状態の物質の中でなかなか外に出られなくて、表面に達するまで、数十万年から一千万年くらいかかるといわれていると。つまり、太陽の表面で光り輝いているエネルギーは少なくとも人類が文明を築く以前に生まれたものであるということになる。これはビックリ。
単に我々が燃えるというイメージで捉えていたものとはまったく違うわけだよね。核融合反応なわけだからね。

さらに月の話題も面白い。
月は1年に3センチずつ地球から遠ざかっていっているという。その理由は、地球が月の公転に比べて高速で自転しているからだと。そして、エネルギー保存の法則から、地球の自転は(10万年に1秒ほどの割合で)次第に遅くなるという。これもまたなんとも不思議な話。っていうか、当たり前なんだけど、ここでもニュートン力学が通用しているっていうのが微妙な気分…。

ニュートン力学といえば、木星の衛星イオに火山活動があったという話も力関係。木星との潮汐力で形が歪められ、内部に熱を持つ。この熱で硫黄などが溶け出し、表面に噴出してくるという。う〜む、恐るべし力。それだけ、質量がデカイってことなんだろうけど。

さて、いよいよ冥王星の話。冥王星にはカロンという衛星がある。ところが衛星と言えども、大きさは冥王星とあまり変わらない。となると、衛星というより、二重惑星と呼んだほうが適切ではないかと筆者。

そんな訳で、冥王星を含む太陽系外縁天体の話。これらは微惑星から惑星へと成長する途中の段階のまま、凍ってしまった天体だと。だから、太陽系天体の分類は、その生成の過程を知ることが重要なんだよね。単に冥王星が惑星から外されたという心象だけの話ではないってこと。
太陽系外縁天体は、太陽系形成初期の惑星成長の過程を現在に至るまで保存している化石といえるのである。
と、筆者。

ということで、冥王星が格下げされたことについて、いろいろと意見があるんだろうけど、成長過程という観点を盛り込んで結論を出したことは、アッシには非常に分かりやすく思えるんだけど。あとは、心象の問題だけなんだよね。
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