2008年11月15日

さまよえる湖

『さまよえる湖』を読んだよ。どこの国にも冒険野郎はいるもんだ。

スエーデンの地理学者・ヘディンが1934年にタクラマカン砂漠のロプ・ノールという湖の周辺を探検する紀行記。椎名誠の『「十五少年漂流記」への旅』で紹介されていたので、ちょっと興味が湧いたわけ。

上巻では、カヌーを使ってクム・ダリアという川を下り、ロプ・ノールに達するまでの話。カヌー旅の始まりはクム・ダリア上流のコンチェ・ダリアという川から。水量が豊かでカヌーの旅は順調のよう。途中、徳門堡というところで川の主たる流れはクム・ダリアに移る。コンチェ・ダリアは干上がっている。先人たちは、ここにダムを築き、川の流れを変えようとする努力をしたようだが、結局、自然の流れには逆らえない。本書の最後に分かるんだけど、ここが「さまよえる湖」解明のポイントだったとは…。

ヘディンは、水量が減ったクム・ダリアを苦労しながら進み、ロプ・ノールに辿り着く。そこで、楼蘭という古代都市の遺跡も発見する。
楼蘭…。名前は聞いたことがあったけど、実際にはこんな場所にあったとは…。そして、シルクロードの要衝がいまは砂漠の中に埋もれているという現実。歴史の不思議、地球の不思議をこの楼蘭が一手に引き受けているような気もするなぁ〜。

さて、下巻では、自動車を使って、中国側からロプ・ノールにアプローチする。残念ながら、ロプ・ノールまでは辿り着かないけれども、砂漠を自動車で進むことの難しさ、そして、かつてのシルクロード発見の難しさを苦労が綴られる。

そして、本書の最後。なぜ、ロプ・ノールは彷徨えるのか。地球の生きざまというか、まさに自然の摂理に沿った動きをしていたのだろうね。水は低い方向へ流れる…その原則を忠実に守っただけなんだろうけど。

全体的に、訳が良かったと思う。適切な日本語と意訳がよいよ。日本人にとって、イメージが湧く意訳という感じでした。
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2008年09月28日

ダーウィン―進化の海を旅する

『ダーウィン―進化の海を旅する』を読んだよ。何故かダーウィンに惹かれています。

ダーウィンものは何冊か読んでいるけど、こちらも彼の生い立ちから業績までを簡単にまとめたもの。本格的に語ろうとすれば、一冊では終わらない分量になるんだろうけどね。

本書は二部構成。
一部はまさに伝記風の内容。
生い立ちについては、父親は彼を医者にしたかったが、それは裏切ることになる話は有名。20代前半でビーグル号に乗り世界を見聞するわけだが、そこで役に立ったのが地質学。古生物学的な証拠は古い地質から発見されるわけで、異なる地域の遺物が同じ相対年代に属することを示すのに有用だから…というわけ。
高校の時に地学部だったアッシが共感する部分がここにもあった…。

ビーグル号の航海で、イギリスに連れ帰ったフエゴ人の話も有名だよね。3年間のイギリス生活で文明社会になじみ、未開の地の人からすっかり脱した3人のフエゴ人。ここに、ダーウィンの人種差別への反発の原点があるんだよね。
世界にはさまざまな振興や風俗習慣があることにも気がついた。未開人の貧しさを身にしみて知ったが、彼らが文明に完璧に適応できることもわかった。また、奴隷制を敷いている国家が、みずからの卑劣さに目をつぶり、優者の劣者に対する当然の権利だと声高に主張していることを激しく非難した。

ビーグル号の航海の後、『種の起源』の着想。フジツボなどの蔓脚類が、軟体動物に分類されていたことに疑問を持つ。そして、変態や、世代交代、一部の生物が成長時期により浮動形から固定形へと変わること、植物の運動などから、まったく違う種類の生物であっても、共通点や類似点が見られることから、すべての生物が共通の祖先をもち、生物の系統図がかけるという考えを示唆していると考えた。まさに種の起源とは何かの発想だよね。

『種の起源』の後。人々にさまざまな考えを与えた『種の起源』。さまざまなイデオロギーが「文明人」「未開人」、「優者」「劣者」などの権威づけをしようとする。しかし、ダーウィンの進化論はそんなことは言っていない。
環境の化学的性質が変わっただけで、それまで少数派だった、いやほとんど無きに等しかった種が、新しい環境における生存・繁栄に適した形質をもっているために優勢になることもあるのだ。

第二部は「資料編」。ちょっと資料というよりも、学術的な解説編と言ったほうがいいかも。難しいし。

ここでは、人間の盲腸のような役に立たない器官(痕跡器官)が進化論の証拠になること、動物発生段階における特徴の出方についても、共通の祖先に近い形態から現れてくること、社会的なダーウィンに対する誤解についてなど、詳しいよ。

さて、アッシの気になるダーウィン。世間への反響を考慮し、なかなか『種の起源』を出版せずにいたところなど、慎重派のアッシには同感するところ有り。それが惹かれる最大の要因かもしれません〜。
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2007年08月25日

歴史家の自画像―私の学問と読書

『歴史家の自画像―私の学問と読書』を読んだよ。阿部先生、最後の上梓。

主に読書に関する筆者のインタビュー、講演、論文、エッセイをまとめた本だよ。

前半のインタビューは、寛いだ感じで阿部先生が答えているので、読みやすく親しみやすい感じ。

そして、「文明としての学問」は新しい視点。文化と文明の違いについて述べているよ。まずはそれぞれの担い手が違うということ。文明の担い手は、文化の担い手からは足を抜かなければならない。そして、文化は地域限定、且つ不合理なものも含まれる。ところが文明は、合理的、普遍的なものであると。
そして、日本について。
はっきり言えば日本には文明がないのです。日本は文化国家ではあるけれども、文明国になろうとしたことはない。文明とは何かと言うと、さっき言いましたように、誰でも受け入れる。そして合理的で機能的だという性質を持っていますから、当然、出入国管理法などとうるさいことは本当は言わないほうがいいわけです。
うん、よ〜く分かる。

さらに引用。
これまで文明の担い手たちはうまくやってきたわけですが、最近はどうもうまくいかなくなってきた。つまり歴史学も文書だけではだめなのです。絵画を読まなければいけない。イメージ・リーディングをしなければならない。あるいは臭いとか色とかに目を向けなければならない。あるいはもっと別なものに目を向けなければいけないということが言われてきて、いわばモノを媒介とする観点に目を向けようとしていることは、文明の学問が自分の限界にやっと気づき始めてことを意味してます。
そう、合理的な文明では説明できない世界もある。これはクオリアのことを言っているのではないかなぁ〜。

さて、最後のエッセイ。阿部先生の名前の由来について、書かれているよ。
私の名前自体かなり勝手な遊び人だった父が、男の子を授かった機会に以後は謹みますと母に誓ってつけられたらしい。
などと、父親の思い出話など。題名は「亡き父との再会」。なんだか、自分の死が近いことを悟ってのエッセイかと思ってしまうが、本書のあとがきの日付が、2006年8月11日。亡くなったのがその翌月の9月4日のことだった。
改めてご冥福を祈ります。
歴史家の自画像―私の学問と読書
歴史家の自画像―私の学問と読書阿部 謹也

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2007年08月13日

戦争遺産探訪 日本編

『戦争遺産探訪 日本編』を読んだよ。季節柄、戦争について考える。

日本各地に残る戦争のために作られた建物、構築物、鉄道等の残骸をレポートした本。意外なところに意外なものが残っていてビックリ。
特にアッシの職場近くは皇居が近いこともあって、いろいろな遺産が残っている。北の丸公園内とか靖国神社周辺とか。その中でも銅像。皇居周辺は銅像をあちこちで見掛けるけど、場所を移動されたりしているものが多いらしい。理由もそれなりに有るんだけど。職場近くを花散歩するときに見掛けた銅像にこういう歴史があったとは…。

千葉周辺も興味深い。特に日露戦争直前に編成された鉄道連隊。東武野田線や新京成線も敷設したとのこと。新京成線は演習用とのことでカーブだらけ。一時期、通学で乗っていたことがあったけど、なんでこんなにクネクネしているんだろうと思ったけど、やっと理由が分かったよ。

日露戦争と書いたけど、そう、ここでいう戦争とは第2次世界大戦の話だけではないよ。西南戦争から日本の軍事は始まっていて、第2次世界大戦まで繋がっているわけ。日本の近代史を戦争を通して理解できたような気がしたよ。
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2007年06月23日

小さい駅の小さな旅案内

『小さい駅の小さな旅案内』を読んだよ。旅の範囲は小さいとは思えないんだけど…。

鉄道を利用した関東近県の日帰り旅案内。関東近県といっても、神奈川、千葉、長野、一部山梨のみ。筆者の嗜好の表れか。あと、日帰りの為か、新幹線や特急もフル活用。で、実際に現地にいる時間は数時間。なんか勿体ないなぁ〜という気分。

それでも観光地はまったく登場せず。そのこだわり方がいいよ。まったく無名の小さな駅に降り立ち、駅間をウロウロと歩く。ガイドブックとは無縁の世界。そこには人に知られない素晴らしい場所がある。そこに住んでいる人にとっては、日常の場所なのにね。

旅って日常からの脱却だけど、観光地は日常の延長でしかないよね。だから、人知れずの場所への旅にアッシもあこがれるんだろうなぁ〜。

そういえば、本書に登場する唯一観光地と言えば、真鶴のような…。
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2007年02月27日

はじめての山歩き

『はじめての山歩き』を読んだよ。福島県にもいい山がたくさん〜。

登山家の田部井淳子氏の山の本。有名どころから、東京・奥多摩、そして筆者の出身地・福島県の山々を紹介した本だよ。
山だけではなく、自然の美しさ、花の美しさも紹介しているよ。アッシ好み〜。

楽しめたのは、福島県の山々の紹介。安達太良山、磐梯山周辺(裏磐梯)、吾妻山、会津駒ヶ岳など。
特に磐梯山周辺はアッシが昔よく通った場所だけに、思い出しながら楽しめたよ。あ〜、あの頃から今のように花に詳しければ、もっと楽しめたんだろうになぁ〜。あ〜、悔しい…。
そして、行ってみたいのが仁田沼。知る人ぞ知る穴場みたい。

あ〜、仕事の山は登りたくないけど、ホントのお山に行きたいなぁ〜。
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はじめての山歩き―花、木、自然に会いに田部井 淳子

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2007年01月27日

ピラミッドの謎

『ピラミッドの謎』を読んだよ。著名な吉村作治先生の著書。いつもの岩波ジュニア新書だけど。

タイトルにはピラミッドとあるけれども、内容は古代エジプトの世界あれこれ。ミイラ、ピラミッド、ツタンカーメン、クレオパトラなどがテーマかな。

ミイラは作り方にアッシ的な興味が…。『解剖学教室へようこそ』に通じるものがあり、古代エジプトに解剖学に近いこんな技術があったことに感動。

ピラミッドも、実は王墓ではなく、単なる公共事業だったという説にも納得。

そして、クレオパトラ。名前は知っていたけれども、どんな人物だったかは、本書ではじめて知ったよ。シーザーという人物とここで繋がるのかぁ〜。なるほどなぁ〜。

というわけで、ついに高校で世界史を未履修だったことを自白するのでした〜。理系だったからかなぁ〜?
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2006年09月16日

ダーウィンの足跡を訪ねて

『ダーウィンの足跡を訪ねて』を読んだよ。進化論?なんじゃそりゃ?

進化論のダーウィン…とここまでならばよく知っている。でも、それ以上のことは何も知らない。アッシだけじゃなくて、普通の人はそうなんじゃないかなぁ〜。
この本は、そのダーウィンの足跡を訪問しながら、それを伝記風にまとめたもの。主にイギリスなんだけれども、ガラパゴスなんかも登場するよ。

で、このダーウィン先生。先生って書いたけど、教員ではないよ。これが、アッシ的には不思議〜って感じ。そう、どこの教育機関に属さない純粋な科学者。それでも生活に困らなかったのは、本人の実家も奥さんの実家も大金持ちだったから。
そして、研究はといえば、遺伝子というものの存在が発見されていなかった時代に、進化という概念を考えたのは画期的なんだろうね。そして、それは神を否定することにも繋がるんだから。

博物学的な話はほとんど出てこず、ちょっと予想が外れたけど、ダーウィンその人自身を知るには入門書的によいのではないかなぁ〜。
ダーウィンの足跡を訪ねて (集英社新書)
ダーウィンの足跡を訪ねて (集英社新書)長谷川 眞理子

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starダーウィンの伝記風旅行エッセイ
starちょっとちぐはぐ・・・

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2006年09月06日

北の街にて

『北の街にて』を読んだよ。阿部謹也シリーズ第11弾。

筆者の小樽商科大学時代のあれこれをエッセイ風にまとめたもの。
エッセイ風とか書いたけど、話の筋的には「小樽商科大学の学内事情」、「ドイツ留学時代」、「一橋大学関係者との交流」、「大学紛争」など。
ただ、それぞれの話が独立しているわけではなく、その中での人との交流の中で筆者が世間の構造を根底で考えているのが、見て取れるってわけ。
『阿部謹也自伝』に近いものがあるような気がするけど、どちらかというと本書の方が阿部氏なりの学問的な考察が含まれているよ。

で、アッシ的に興味深かったのは、小樽商科大学の学内事情のこと。小樽という街の狭さに加えて、大学という小さな世間。その世間の難しさを思い知らされたよ。
例えば、大学紛争後において、教官と職員の関係に大きな変化があったことが、ズバリと書かれているのはビックリ〜。

また、ところどころで紹介される西さん(元一橋大学教授)からの手紙。世間との関わり方についての一例がこの手紙の中にあるような気がするよ。

『阿部謹也自伝』でも、吉祥寺の話が多少出てきたけど、今回はアッシの知っている喫茶店が出てきたよ。ますますお近づきです〜。
北の街にて―ある歴史家の原点 (洋泉社MC新書)
北の街にて―ある歴史家の原点 (洋泉社MC新書)阿部 謹也

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2006年07月01日

中世の窓から

『中世の窓から』を読んだよ。阿部謹也シリーズ第9弾。

いよいよ筆者の西欧中世史ものの最高峰に挑む。阿部謹也氏の本は何冊も読んできたけれども、西欧中世史に関するものはなかなか手が出なかったよ。それは理解し難かったから。でも、今回は図書館の閉館の関係で長期に借りられることが分かったので、いよいよ読む気になったというわけ。でも、読んでみると、朝日新聞に連載されていたものをまとめたものだけあって、筆者のこの手の本の中では分かりやすかったよ。

さて、本書の内容。中世ドイツの人々の人と人との関係がどのように変化していったかを様々な事例をもとに分析しているっていう感じかな。

ポイントは、人と人との関係は、モノを媒介とする関係と目に見えない絆によって結ばれている関係の二つがあるということ。そして、その二つの関係が中世において、徐々に後者が幅を効かせてくるようになるということ。その変化は徐々にではあるけれども、結果的には大きな変化であったということ。
ひと言で言うことは難しいけど、アッシ的にはこの本の解釈はそんな風。

そして、新たな発見もあったよ。ユダヤ人迫害のこと。その背景が本書を読んで分かったよ。今まで、考えたことも無かったことだから、ちょっとお利巧になった気分。

で、この西欧中世における人と人との関係の研究。当然なんだけど、日本人の世間学に繋がっているんだよなぁ〜。
中世の窓から (朝日選書)
中世の窓から (朝日選書)阿部 謹也

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2006年05月27日

自分のなかに歴史を読む

『自分のなかに歴史を読む』を読んだよ。阿部謹也シリーズ第7弾。

ちくまプリマーブックスの一冊だから中高生向けで分かりやすかったよ。岩波ジュニア新書と並んで読みたくなるような本がたくさんありそう〜。

内容的には、自伝的な要素とヨーロッパ中世史のなかから人々の生き方を考える本って感じかな。

当然、賤民や差別の話は出てくるけれども、日本の世間の話には至らなかったよ。

以前の本にも出ていたけれども、小宇宙と大宇宙の考え方も良く分かった様な気がする。だから、中世ヨーロッパの人々が日々の生活の中で世の中に対し、どんなことを考えていたか、そしてキリスト教の影響がどんなところまで及んだのかも分かったような気がする。
そして、新たな視点もあったよ。交響曲の成立の過程までもが二つの宇宙に関連しているという筆者の見方。ここでは、音楽の合理化とか二つの宇宙の一元化というような言い方で説明しているよ。なるほどなぁ〜。

最後に引用。氏が一橋大学時代のゼミナールで学んだ重要なことについて。
「解るということはいったいどういうことか」という点についても、先生があるとき、「解るということはそれによって自分が変わることでしょう」といわれたことがありました。
そうそう、解ったなら行動しないと解ったことにはならないんだよね。
自分のなかに歴史をよむ (ちくまプリマーブックス (15))
自分のなかに歴史をよむ (ちくまプリマーブックス (15))阿部 謹也

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2006年03月03日

日本社会で生きるということ

『日本社会で生きるということ』を読んだよ。阿部謹也シリーズ第6弾。

「世間」をテーマとした著者の6つの講演をまとめたものだよ。だから、話口調で書かれているので、非常に理解しやすいよ。例えば、以前の著作でも紹介されていたアイスランドのサガの紹介が今回があるけど、この本でようやくサガを紹介した意味が分かったような気がしたよ。

そんな中で、今回は日本には個人が無いということを示した例を本文中より2件ほど紹介。なるほどと思わせる印象的な事例だよ。

明治までは日本には自画像がというものがなかった。ヨーロッパでは自画像の歴史がある。日本では肖像画はあるけど、自画像ではない。その説明は以下の引用から。
これは、自分を個人を「世間」から切り離して見るということがないからです。あるいは自分を語ることがないからです。

夫婦茶碗の例も面白い。ドイツ人の家にお土産として夫婦茶碗を持っていった時、奥さんが大きい方を取って、「これが私の」と言ったという。もう一度、その説明を引用。
個人として妻や夫が位置しているのではなくて、夫婦という単位で暮らしている。さらにまた、そこにはある種の価値の上下まである。そういう意味ではヨーロッパ的な教育を受けながら日本人とはそれを建前としてしか受け止めてこなかった。

日本人が使う建前と本音の意味が、ここで鮮明になったような気がしたよ。
日本社会で生きるということ
日本社会で生きるということ阿部 謹也

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2006年02月20日

新・東京の自然水

『新・東京の自然水』を読んだよ。高校時代は地学部所属。

題名通り、東京に存在する自然水を紹介している本だけど、自然水の範囲としては、湧水、温泉、地下水、井戸等。
その中でアッシの一番の興味は湧水。それはアッシが一番身近に捉えられるから。子供の頃から、井の頭公園(井の頭池)、善福寺公園(善福寺池)、石神井公園(三宝寺池)、武蔵関公園(富士見池)、妙正寺公園(妙正寺池)といった場所が遊び場だったよ。

本書に戻る。練馬区内に40年近く住んでいるけど、その練馬区内で今でも湧水が出ているところがあることを知り、衝撃を受けたよ。それが「八の釜憩いの森」。本の紹介では「東京の忍野八海」とか書かれているよ。
で、実は早速先日現場に行ってみたよ。近所にこんな凄い場所があったなんてビックリ〜って感じの自然が残されていたよ。それほど広くはないけど、人工的なものが皆無な場所。肝心の湧水は1箇所だけになったみたいで、池を覗いてみたけど、本書に書かれていたような自噴している感じはしなかった…。残念。

東京はそんな湧水が多いよね。地形的には多摩川の扇状地地形だから、奥多摩から地下に潜った地下水が崖地や傾斜地で地表に現れてくるんだろうね。←と、最後に元地学部部員として当時の研究成果を発表。
新・東京の自然水
新・東京の自然水早川 光

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2006年01月29日

白神山地−恵みの森へ−

『白神山地−恵みの森へ−』を読んだよ。山の本が続く〜。

世界遺産に登録された白神山地に生活する人々を様子やその自然をまとめた本だよ。青森側が中心だけど。

高尾山の本でも同じだったけれども、生態系を考える自然保護の考え方はこの筆者も同じよう。白神山地が世界遺産に登録されたといっても、それは一部の場所に限られていて、その周辺ではいままでと同じような開発が続いているようだよ。
だから、金アユが減少したり、河川の水量が減ったりする。それは地元の人々の生活に直接影響を与える。
屋久島のように島全体が世界遺産に登録された場合は、島全体の生態系が保護されるわけだから、理想的なんだろうね。

面白かったのは「入山禁止」の考え方。結局、生態系を考えた保護ならば、「入山禁止」なんていう発想にはならないんだろうね。単に入山者はゴミを捨てるなとかいったレベルではないんだから。
「入山禁止」はある学者様の研究の為の独り占め行為に他ならないと筆者。

山は誰のものか、改めて問いかけなくてはならないね。アッシのひとりの登山者として。
白神山地 恵みの森へ 単行本
白神山地 恵みの森へ 単行本根深 誠

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2005年12月13日

「世間」論序説(西洋中世の愛と人格)

『「世間」論序説(西洋中世の愛と人格)』を読んだよ。阿部謹也シリーズ第5段。

後書きによると、氏が世間について書いた初めての本みたい。だから、1992年に最初の単行本が出た時は本書の副題が書名だったよ。この副題から、世間の話は想像できないよね。

相変わらず、日本の世間の話の部分はすんなり理解できるんだけど、西洋の人格の形成とかの話になるとちょっと理解が追いつかない。島崎藤村とか金子光晴の話は以前の著書と重複するし。

その理解しやすい日本の世間の話は最初の章だけ。後は西洋の愛とか人格の話の話になる。アッシが理解したのは、キリスト教の告解という行為が西洋の個人を成立させたということだけ。
だから、西洋の愛とか人格が世間とどのように関連してくるのかが、さっぱり?だったよ。恥ずかしいことだけど。

恥ずかしいと言えば、最初は単行本『西洋中世の愛と人格』を読んでいたけど、電車の中で書名を見られるのがちょっと恥ずかしかったような…。
「世間」論序説―西洋中世の愛と人格 (朝日選書)
「世間」論序説―西洋中世の愛と人格 (朝日選書)阿部 謹也

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2005年11月26日

高尾の森から

『高尾の森から』を読んだよ。森の本が続いているけど、新たな発見多々有り。

筆者は高尾ビジターセンターの自然解説員(当時)。その当時に高尾山であったこと、思ったことを綴ったものがこの本だよ。

東京に住んでいて、高尾山に登ったことが無い人はまずいないと思うよ。アッシにしても、初めて個人的に出掛けた山行は高尾山だったし、高校の遠足でも行ったような気がする。
そうそう、毎年4月に中央線に乗ると小学生の団体に遭遇することが多いし。

そういう意味で筆者が言うように、高尾山にヒトが訪れることにより、高尾山に与えるインパクトはかなりのものなんだろうなぁ〜と思うよ。それが一番の自然破壊である裸地化に繋がるんだろうね。

本書の前半は、高尾山の自然について、あれこれ。植物、動物、昆虫、気象とさまざまな話題。後半はヒト的な話題。
このヒトが一番高尾山にとっては厄介な代物なんだよね。本来の自然の仕組みが分かっていないから、自分勝手な論理を振り回すヒト。圏央道建設にしても同じようなことが言えるみたい。あ〜あぁ。

それでも、この本を読むと改めて高尾山にまた出掛けたくなるよ。インパクトを与えない為には出掛けないのがベストなんだけど。あ〜、矛盾があるよね。
高尾の森から―平成の都民へ呼びかける
高尾の森から―平成の都民へ呼びかける米沢 邦昌

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2005年10月18日

里山を歩こう

『里山を歩こう』を読んだよ。最近、お気に入りの岩波ジュニア新書カラー版。

滋賀県大津市の仰木を紹介した半分写真集。
多分、日本の何処にでもある里山と同じなんだろうけど、こうして改めて紹介されるときれいだよね、里山。

そして、当たり前なんだろうけど、そこに暮らす人々の生活が四季の自然と共にあるんだよね。そしてそれが普通に営まれている。都会にいるアッシはそういった営みとは無縁に暮らしている。それでいいような悪いような…。

このところ、休日に雨というパターンが続いているね。出撃もままならず、本読みが続いています。
カラー版 里山を歩こう (岩波ジュニア新書)
カラー版 里山を歩こう (岩波ジュニア新書)今森 光彦

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2005年10月15日

「教養」とは何か

『「教養」とは何か』を読んだよ。阿部謹也シリーズ第4弾。そして『「世間」とは何か』の続編。

前著が分かりやすく面白かったの対し、こちらはいきなり難解。全体の2/3は半分?で頭に入っていないかも。
というのも、前著は引用がほとんど日本の書物だったのに対し、こちらはヨーロッパものが多かったからかも。

そんな訳で、アッシが理解したことも、断片的。

・「いかに生きるか」という問いが教養の始まりだった。
・建前と本音があるのは「世間」があるからだ。
・「世間」は身振りの世界である。だから、建前は文字で表された。
・個人の教養と集団の教養は異なる。ここでいう集団とは世間のこと。

特に、建前と本音の話はすごくよく理解できたよ。建前は世間のため。本音は自分のためだからね。
結局、世間についての理解は深まったけど、教養については…?だね。
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2005年09月23日

「世間」とは何か

『「世間」とは何か』を読んだよ。阿部謹也シリーズ第3弾。

いよいよ「世間」の本丸本…と思ったら、ちょっと予想外の内容。
日本人が世間に対して思っていたことや対峙していたことを、過去の文学作品の中から探り出そうという試みの本だよ。
万葉集の和歌から始まって、徒然草の吉田兼好、親鸞らの真宗教団の教え、江戸時代に入っては井原西鶴、近代は夏目漱石、永井荷風、金子光晴らの作品を取り上げているよ。
そういう意味で理屈を捏ねていないから、読みやすかったよ。引用とその解説というパターンの繰り返しも多かったし。

で、自分に振り返ってみて。
社会の法律だとか規則とかより、世間様の常識とか礼儀が優先しているような気がするんだ。そして、ほとんどの人が振り回されているような…。それがいいようで悪いような…。いや、イヤだと思っていても、それを無視する勇気もない。結局、どう自分の中で折り合いをつけていくかなんだろうね。

最後に引用。夏目漱石『坊ちゃん』について、筆者が語る。
明治以来私達は、私達を拘束している「世間」の存在に感づいていたにもかかわらず、それを対象化することができず、そのために坊ちゃんに身を寄せて架空の世界の中で「世間」をやっつける楽しみを味わってきたのである。
文学の世界を持って、世間との折り合いをつけるという例か…。
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star東西の個人と社会そして「自由・平等・平和」の成り立ち
star世間は何かは人それぞれ
star「世間」は空気のように見えない、感じない

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